ジープニー

ジープニー：フィリピンを彩る乗合タクシー

ジープニーは、フィリピン全土で見られる独特な乗り合いタクシーです。現地では単に「ジープ」とも呼ばれ、そのカラフルで個性的な外観は、フィリピンの街並みに欠かせない風景となっています。もともとは第二次世界大戦後、アメリカ軍が残したジープを改造して作られたのが始まりで、ジープと北米で乗合タクシーを意味する「jitney」を組み合わせて「jeepney」と呼ばれるようになりました。

車両の特徴

ジープニーは、多くが小型貨物自動車を改造して作られています。現在では、日本製の2～4トントラックのエンジンやシャシーをベースに、フィリピン製のステンレスボディや中古部品を組み合わせて製造されています。マニュアルトランスミッションが100%で、オーナーがそれぞれに派手な塗装や装飾を施すため、一台として同じ車両は存在しません。ボンネット型が多かった初期のジープニーですが、近年はピックアップトラックを改造したタイプも増えています。フロントグリルにはジープの面影が残っており、客室スペースを確保するためホイールベースが長いのが特徴です。

客室は、トラックの荷台にベンチシートを向かい合わせに設置したシンプルな構造で、屋根には荷物を積むこともあります。窓は無いか、あっても開放的なのが一般的で、雨天時にはビニールカーテンを使用します。乗降は後部の開口部から行い、ドアはありません。乗車定員は16人程度が一般的ですが、大型のものでは30人乗り、小型のものでは10人乗りのものも存在します。乗客が多い場合は、後部にぶら下がったり屋根に乗ったりすることもあります。自家用車として、乗用車のシャシーにボディを乗せた「owner-type jeepney」も多く見られます。

運行形態

[ジープ]]ニーは、路線バスのように決まったルートを往復し、車体に目的地や経由地が表示されています。バス停のような場所で乗り降りするほか、デマンドバスのように自由に乗り降りできます。マニラ首都圏では路線バスが幹線を担いますが、地方では100kmを超える長距離路線も存在します。時刻表はなく、乗客が集まり次第出発し、走行中でも天井を叩いて降りたい場所を伝えれば停車してくれます。公式な路線図は存在しませんが、日本の[[国際協力機構]が作成したマカティ市の路線図があります。

運賃と雇用

初乗りは9ペソ（2019年1月現在）で、運賃は運転手に直接支払いますが、満席の場合は運転席に近い乗客がお金をリレーして渡します。お釣りも同様にリレーで返ってきます。ほとんどのジープニーには車両のオーナーがおり、運転手はオーナーに車両の借用料を支払い、運賃を自分の収入とします。

抱える問題

ジープニーは、その数の多さから排気ガスによる大気汚染の原因となっています。特に1990年代に日本で規制対象となった小型ディーゼル車が大量に輸出されたことが、排ガス問題の大きな原因の一つです。また、整備状態が悪く、安全面での懸念も指摘されています。ホイールナットが欠落していたり、冷却水を頻繁に補充する必要がある車両も存在します。衝突安全性が考慮されていないため、2023年には公営バスとの衝突事故で多数の死傷者が出るという悲惨な事故も発生しています。さらに、運転手が少しでも収入を増やそうと無理な運転をすることが多く、渋滞や事故の原因にもなっています。

近代化計画と課題

このような問題を解決するため、フィリピン政府は旧型車両の廃止などを盛り込んだジープニー近代化計画を策定しましたが、計画に対する運転手たちの反発も大きく、ストライキが頻発しています。ジープニーは多くの人々の生活を支える重要な交通手段であるため、その近代化は容易ではありません。しかし、より安全で環境に優しい交通手段への転換は、フィリピンの持続可能な発展のためには不可欠です。

ジープニーの現在

ジープニーは、フィリピンの歴史と文化を象徴する存在であり、今もなお多くの人々の足として活躍しています。その独特な外観は、観光客にも人気があり、フィリピンを訪れる際にはぜひとも見ておきたい光景の一つです。しかし、その一方で、環境問題や安全性の問題など、解決すべき課題も多く存在しています。ジープニーの未来は、フィリピン社会全体の発展と深く関わっており、その動向は今後も注目されていくでしょう。

日本における展示

日本では、大阪府吹田市の国立民族学博物館、福岡市東区の貝塚公園、愛知県犬山市のリトルワールドでジープニーを見ることができます。

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