ストーンウォール・ジャクソン

トーマス・ジョナサン・ジャクソン、その生涯

トーマス・ジョナサン・ジャクソンは、1824年1月20日、または21日にバージニア州クラークスバーグで生を受けました。南北戦争時代にアメリカ連合国（南部連合）の軍人として活躍し、その勇敢な戦いぶりから「ストーンウォール・ジャクソン」の異名で知られています。ロバート・E・リー将軍の片腕として北軍を苦しめましたが、1863年、チャンセラーズヴィルの戦いで不慮の死を遂げました。

生い立ち

ジャクソンの父方の曽祖父は北アイルランド出身で、アメリカ独立戦争にも従軍したジョン・ジャクソンです。トーマスは、父ジョナサンと母ジュリアの間に生まれた三人兄弟の次男でした。2歳の時に父と姉が腸チフスで急逝、その後、母も再婚後に亡くなり、7歳で孤児となります。

兄は母方の親戚に引き取られましたが、ジャクソンと妹は、父方の叔父であるカミンズ・ジャクソンの農場で育てられます。叔父はジャクソンを厳しく育て、当時のバージニアの田舎では難しかった教育を、自学自習を交えて行いました。ジャクソンは農場の黒人奴隷に読み書きを教えるなど、道義を重んじる一面も持っていました。

合衆国軍人として

1842年、ジャクソンはウェストポイントの陸軍士官学校に入学。入学当初は学業に苦労しますが、懸命な努力で卒業時には59人中17位の成績を修めます。1846年、アメリカ陸軍に入隊し、米墨戦争では果敢な戦いぶりで2度の名誉昇進を果たしました。この戦争でロバート・E・リーとも親交を深めています。

1851年、ジャクソンはバージニア軍学校の教官に就任。自然哲学と砲兵術を教えましたが、厳格な指導で学生にはあまり人気がありませんでした。一方で、黒人たちのための日曜学校で生徒から尊敬を集め、奴隷所有者でもあったものの、人道的な一面も持ち合わせていました。

1853年、最初の結婚をするも、長男の出産時に母子ともに亡くなるという悲劇に見舞われます。1857年に再婚し、後に二人の娘をもうけました。1859年には、ジョン・ブラウンの蜂起事件に対応するため、軍学校の部隊を率いて出動しています。1861年、南北戦争が開戦し、ジャクソンの運命は大きく変わります。

石の壁ジャクソン

南北戦争開戦後、ジャクソンは南軍の新兵指導に携わります。1861年6月には准将に昇進し、ジャクソン旅団の指揮を任されました。第一次ブルランの戦い（第一次マナッサスの戦い）では、北軍の猛攻に対してジャクソン旅団が頑強に抵抗。その際、ジャクソンが直立不動で指揮を執る姿を見た将軍が、「石の壁のようにジャクソンが頑張っているぞ！」と叫んだことから、「ストーンウォール・ジャクソン」と呼ばれるようになりました。

バレー戦役

1862年春、ジャクソンは少将に昇進し、シェナンドー・バレーの防衛を任されます。バレー戦役では、カーンズタウンの戦いで一度敗北したものの、その後のマクドウェルの戦い、フロントロイヤルの戦い、第一次ウィンチェスターの戦いで北軍を次々と撃破。その機動性と戦術は、北軍に大きな脅威を与えました。バレー戦役で、ジャクソンは17,000の軍を率いて646マイルを機動し、5回の大きな会戦で勝利を収め、60,000もの敵軍を打ち破ったとされています。

リーの右腕

バレー戦役後、ジャクソン軍はリーの指揮下に入り、北バージニア軍の第2軍団となります。ジャクソンはリーの作戦指揮に欠かせない存在として活躍しました。七日間の戦いでは、一部精彩を欠いたものの、第二次ブルランの戦いでは、北軍の側面を迂回し、物資集積拠点を制圧。その後、アンティータムの戦いで大きな損害を受けますが、フレデリックスバーグの戦いでは、北軍の攻勢を阻止し、南軍の勝利に貢献しました。

最期

1863年春、チャンセラーズヴィルの戦いで、ジャクソンは軍を率いて北軍の側面を衝く奇襲作戦を成功させました。しかし、戦闘後、帰還途中に南軍兵士の誤射によって負傷。左腕を切断する手術を受けましたが、その後肺炎を併発し、5月10日に息を引き取りました。最期の言葉は「川を渡って…木陰で休もう…」だったと伝えられています。ジャクソンの死を知ったリーは、「彼は左腕を失ったが、私は右腕を失った！」と嘆き悲しんだとされています。

人物像

ジャクソンは、南北戦争において最も優れた将軍の一人とされています。作戦の秘匿に長け、戦闘教則を重んじました。外見は質素で、着古した軍服を好んで着ていましたが、信仰心に篤く、妻や娘を愛する優しい一面もありました。また、大の睡眠好きで、口に物を入れたまま眠ってしまうこともあったそうです。

後世への影響

ジャクソンの遺体はリッチモンドを経て、レキシントンのストーンウォール・ジャクソン記念墓地に埋葬されました。南部ではジャクソンは大変な尊敬を集め、多くの人がその死を悼みました。戦後、妻のマリー・アンナがジャクソンに関する本を出版し、彼の人物像が広く知られるようになりました。

ストーンマウンテンには、デービス、リーと共にジャクソンのレリーフが彫られ、各地に像が建てられています。ウェスト[[バージニア州]]には、ストーンウォール・ジャクソン州立公園があります。また、アメリカ海軍は「ストーンウォール・ジャクソン」という名の艦を保有し、第二次世界大戦中には「T.J.ジャクソン」というリバティ船も建造されました。ジャクソンの誕生日は、現在バージニア州の祝日「リー・ジャクソン・デー」となっています。M36ジャクソン駆逐戦車の名前の由来でもあり、ヘミングウェイの小説『河を渡って木立の中へ』はジャクソンの最後の言葉からタイトルが取られています。

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