スペースシップ III

スペースシップ III (SpaceShip III)

ヴァージン・ギャラクティックが開発を計画したスペースシップ III（SpaceShip III、略称SS3）は、同社の既存機であるスペースシップツーに続く次世代のスペースプレーンとして構想されました。民間宇宙旅行事業の拡大を目指す中で、様々なコンセプトを経て進化しました。

発表と現状

SS3の存在は2021年2月に公表され、同年3月30日には初号機VSS Imagineが公開されました。この機体は地上試験後に飛行試験に進む予定でしたが、実際には飛行に至ることはありませんでした。2024年現在、開発中だったVSS ImagineとVSS Inspireの2機は、ヴァージン・ギャラクティックが開発を進める新型機Delta Classのための地上試験などに転用されることが報じられています。

多様なコンセプトの歴史

スペースシップ IIIのアイデアは、その歴史の中で大きく変遷しています。2005年には、スケールド・コンポジッツ社の創設者バート・ルータン氏による「Tier 2」プログラムとして、民間軌道宇宙飛行を目指す計画の一部とされました。しかし、2008年頃には、大気圏外を経由するポイントツーポイントの亜軌道旅客機という概念に変化し、ロンドン・シドニー間を2時間で結ぶような高速輸送手段として構想されました。この初期のコンセプトは、スケールド・コンポジッツがノースロップ・グラマンに売却される（2007年）などの経緯の中で、その後の作業が終了したとみられます。基本技術は、2004年にポール・アレン氏からライセンス供与されたものです。2012年にはヴァージン・ギャラクティックがスペースシップ・カンパニーを完全支配下に置き、2016年にはリチャード・ブランソン氏もSS2のフォローアップとしてポイントツーポイント機を計画していました。

現在のコンセプト

2021年初頭に発表されたSS3のコンセプトは、過去のポイントツーポイント輸送構想とは異なり、既存のスペースシップツーの性能向上版として、宇宙旅行者に数分間の無重力体験と地球の眺望を提供するという、現在のヴァージン・ギャラクティックの事業に即したものでした。

開発中止と転用

最初のSS3であるVSS Imagineは2021年3月に公開され、地上試験後に飛行試験へと進む計画でしたが、計画通りに進みませんでした。ヴァージン・ギャラクティックはより効率的で経済的な運用が可能なDelta Classの開発を優先させ、2024年にVSS Unityが退役するのに伴い、開発中のVSS ImagineとVSS Inspireは、Delta Classの開発を加速させるための地上試験機材として活用されることになったのです。これは、民間宇宙開発における技術の進歩や市場ニーズの変化に対応するための、計画の再調整の結果と言えます。

もう一度検索