スペースシップ・カンパニー

スペースシップ・カンパニー（英語: The Spaceship Company、略称: TSC）は、イギリスとアメリカ合衆国の航空宇宙製造企業です。2005年半ばに著名な航空機設計者であるバート・ルータン氏とヴァージン・グループ創設者のリチャード・ブランソン氏によって共同設立されました。設立当初は、ヴァージン・グループが70%、航空宇宙開発企業であるスケールド・コンポジッツが30%を出資する合弁事業として運営されていましたが、2012年にはヴァージン・ギャラクティックがスケールド・コンポジッツの持ち分を取得し、単独の所有者となりました。

この会社の設立目的は、ヴァージン・ギャラクティックが進める宇宙旅行プログラムで使用される技術、特にモハーヴェ・エアロスペース・ベンチャーズからライセンス供与された大気圏再突入システムやカンチレバー式ハイブリッドロケットモーターなどの開発技術を所有・管理することにありました。同社は現在、ヴァージン・ギャラクティックが運用する宇宙船「スペースシップツー（SS2）」や、その宇宙船を空中に運び高高度から放出する母機「ホワイトナイトツー（WK2）」の製造を担っています。将来的には、ヴァージン・ギャラクティックだけでなく、他の顧客にもこれらの航空宇宙機を提供する計画を持っています。

歴史

設立から共同所有の時代（2005年〜2010年）

スペースシップ・カンパニーは、宇宙旅行産業の黎明期である2005年に、バート・ルータン氏とリチャード・ブランソン氏という航空宇宙分野とビジネスの世界で知られる二人の協力のもと誕生しました。設立当初の所有構造は、ヴァージン・グループとスケールド・コンポジッツによる共同出資であり、その主な役割は、ヴァージン・ギャラクティックのヴァージン宇宙船プログラムに関連する技術の開発と所有でした。ヴァージン・ギャラクティックは、開発中のスペースシップツーとホワイトナイトツーの最初の主要顧客として、当初スペースシップツーを5機、ホワイトナイトツーを2機発注し、商用運航開始後の最初の18ヶ月間、これらのシステムを独占的に使用する契約を結びました。2010年後半までには、合計でホワイトナイトツー3機とスペースシップツー5機を製造する計画が進められていました。

ヴァージン・ギャラクティックによる完全所有以降（2011年〜現在）

ホワイトナイトツーの初号機およびスペースシップツーの初号機はスケールド・コンポジッツによって製造されましたが、2番機以降の製造はスペースシップ・カンパニーが引き継ぐことになりました。これにより、スペースシップ・カンパニーはヴァージン・ギャラクティック向けの2番目のWK2と2番目のSS2、そして将来的に他の顧客からの発注に対応するための追加機体の製造責任を負うことになったのです。組織体制においては、2012年にヴァージン・ギャラクティックがノースロップ・グラマンが所有していたスケールド・コンポジッツの30%の株式を取得することで、スペースシップ・カンパニーはヴァージン・ギャラクティックの100%子会社となりました。従業員数も着実に増加し、2011年7月の70人から、2013年6月には145人、2014年7月には250人、そして2018年7月には430人を超える規模へと拡大しました。経営面では、スケールド・コンポジッツで31年のキャリアを持つダグ・シェーン氏が2013年6月にエグゼクティブVP兼ゼネラルマネージャーとして加わり、2014年7月には社長に任命されています。航空宇宙分野の新たな取り組みとして、2016年にはヴァージン・ギャラクティックおよびヴァージン・グループと共に、ブーム・テクノロジーと協力し、大洋横断超音速旅客機の開発計画を発表しました。2018年2月の時点では、スペースシップ・カンパニーはスペースシップツーの設計に基づいたプロトタイプの複製と試験を進め、2019年の宇宙飛行実現を目指しており、ヴァージン・ギャラクティック向けの機体製造も並行して行われています。

製造活動

宇宙船製造

スケールド・コンポジッツが初期のホワイトナイトツーとスペースシップツーのプロトタイプを製造した後、スペースシップ・カンパニーは2010年からこれらの航空宇宙機の商業生産への移行を発表しました。2014年7月には、2番目のスペースシップツーである「VSS Unity」の製造が半分ほど完了し、同年11月初旬には65%まで進捗しました。このVSS Unityは、2016年2月19日にヴァージン・ギャラクティックによって正式に公開されています。2018年5月には、VSS Unityに続く2機のスペースシップツーも製造が進められていることが明らかになりました。

航空機製造

宇宙船製造と並行して、スペースシップ・カンパニーは超音速輸送機の分野でも活動しています。ブーム・テクノロジーとの協力を通じて新しい超音速旅客機の開発に携わっており、その一環として、プロトタイプとなる3分の1スケールの超音速デモンストレーター機「Boom XB-1（Baby Boom）」の製造にも貢献しています。

生産施設

スペースシップ・カンパニーの主要な製造拠点は、カリフォルニア州モハーヴェのモハーヴェ航空宇宙港に位置しています。2010年11月には、68,000平方フィート（約6,300平方メートル）の新航空機組立工場建設に着工し、製造が本格化した際には最大170人の雇用を生み出すと期待されました。この新工場は2011年9月に予定通り800万USドルの費用で完成しました。2011年7月には、ヴァージン・ギャラクティック向け、そして将来的には他の顧客向けの2番目のホワイトナイトツーの最初のセクションと、複数のスペースシップツーの最初のセクションの生産を開始すると発表しています。また、2011年秋には「最終組み立て、統合、テスト格納庫（FAITH）」と呼ばれる別の主要施設が稼働を開始しました。このFAITH格納庫は、ホワイトナイトツーの一体型複合材製スパーや主翼、そしてWK2とSS2両方の胴体部材の製造に使用されるほか、機体の最終組み立て、システム統合、テスト、主要なメンテナンスの拠点としても機能し、会社の運営本部もここに置かれています。

スペースシップ・カンパニーは、これらの施設を駆使し、ヴァージン・ギャラクティックの宇宙旅行事業を支える機体の製造に重要な役割を果たしています。

もう一度検索