スルターン・フサイン (サファヴィー朝)

スルターン・フサイン：サファヴィー朝衰退を招いたシャー

スルターン・フサイン（1668年 - 1726年）は、サファヴィー朝の第9代シャー（在位：1694年 - 1722年）として、王朝の衰退を招いた人物として知られています。父サフィー2世スライマーンの跡を継ぎましたが、その治世は無策と混乱に満ち、サファヴィー朝の滅亡を決定づけました。

傀儡の君主として即位

1694年、フサインは兄アッバースを差し置いてシャーの座に就きます。これは、後宮の実力者たちが、アッバースよりも操りやすい人物を求めた結果でした。敬虔なイスラム教徒であったフサインは、当初、シーア派の神学者ムハンマド・バーキール・マジュリシーの政策に従い、他宗派やスンナ派、スーフィーへの弾圧を行いました。

しかし、間もなくフサインは政治を放棄し、酒と女に溺れるようになります。後宮での女性漁りに熱中し、浪費によって財政を傾けました。首都イスファハーン郊外に建設した宮殿や宗教施設の建設も、財政を圧迫しました。1706年には、6万人もの人々を引き連れて歴代イマームの廟を巡礼し、1年間もイスファハーンを空けるなど、その行動は領民の不満を高めました。

フサインの無能さから、宦官が権力を握り、政治は腐敗しました。地方行政は機能不全に陥り、賄賂と派閥争いが横行し、軍隊は弱体化の一途を辿りました。フサインは、グルジアのカルトリ王国の国王をケルマーン総督に任命して反乱を鎮圧しようとしましたが、これは一時しのぎに過ぎず、地方の不満は募るばかりでした。

ギルザイ部族の反乱とサファヴィー朝の滅亡

1709年、パシュトゥーン人のギルザイ部族の族長ミール・ワイスが、グルジン・ハーンを謀殺し、カンダハールを中心に独立を宣言しました。フサインは懐柔策としてミール・ワイスをヴェキールに任命し、ミール・ワイスもフサインの臣下として留まりました。

しかし、1714年以降、ペルシア湾沿岸の港町がアラブ系海賊に襲撃されるようになり、1715年には政府が小麦を買い占めたため、民衆による暴動が発生しました。アフガン系のアブダーリー部族もヘラートで反乱を起こし、情勢は悪化の一途を辿りました。

1719年、ミール・ワイスの息子マフムードがサファヴィー朝に対して反乱を起こし、ケルマーンを占拠しました。1721年には再び挙兵し、イスファハーンへ迫りました。1722年3月8日、両軍はグルナーバードで衝突し、サファヴィー軍はギルザイ軍に大敗を喫しました。

マフムードはイスファハーンを包囲し、7ヶ月にわたる抵抗の末、食糧不足と疫病により多くの死者が出ました。10月21日、フサインはマフムードに降伏し、シャーの位を譲り退位しました。これにより、首都を失ったサファヴィー朝は事実上滅亡しました。

幽閉と最期

フサインの息子タフマースブ2世が旧都ガズヴィーンでシャーを宣言し、ギルザイ部族への抵抗を続けましたが、ペルシアの混乱は収まりませんでした。ギルザイ部族は、反乱の旗頭に擁立されることを防ぐため、フサインを除くサファヴィー朝の王子達を殺害しました。

1725年、ギルザイ部族はアシュラフを新たな族長に選びました。フサインはアシュラフの下で幽閉生活を送っていましたが、1726年にオスマン帝国がペルシアの混乱に乗じて出兵し、フサインの復権を口実にペルシアへ侵攻しました。身柄をオスマン帝国に奪われることを恐れたアシュラフによって、フサインは処刑されました。

スルターン・フサインの治世は、サファヴィー朝の衰退を象徴する出来事として、歴史に深く刻まれています。

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