セチェウル

セチェウル（モンゴル語: Seče'ür, 中国語: 薛潮兀児）は、13世紀初頭にモンゴル帝国に仕えた人物です。漢文史料では薛潮兀児、失乞兀児などと記され、セキウルとも呼ばれます。薛徹兀児も同一人物と考えられています。

生涯

セチェウルは、チンギス・カンの父イェスゲイの時代から活躍していました。しかし、一度チンギス・カンの下を離れ、ジャムカと決別後のテムジン（チンギス・カン）陣営に帰参しています。

帰参後、セチェウルはチンギス・カンからバウルチ（大膳職）に任ぜられました。宴会での出来事として、サチャ・ベキの妃が酒をつぐ順番に不満を持ち、セチェウルを打ち据えたという逸話が残っています。セチェウルは「イェスゲイ・バートル、ネクン・タイシが亡くなったからといって、私がこのように打ち据えられるとは」と嘆いたとされています。この事件は、チンギス・カンの下へ多くの家臣（ノコル）が集まり始めた頃に起こり、新たな家臣団と旧来のキヤト氏族長との間に生じ始めた対立を示すものと考えられています。

この逸話の後、チンギス・カンの出兵要請を拒否したジュルキン氏が襲撃され、最終的にチンギス・カンによって滅ぼされるという事件が起こりました。セチェウルの逸話とジュルキン氏の滅亡の間に関係性があったかどうかは定かではありません。

セチェウルのその後の動静は不明です。しかし、1206年にモンゴル帝国が建国されると、帝国の幹部層である千人隊長に任ぜられました。『元朝秘史』の功臣表では77位に列せられています。一方、『集史』の「チンギス・カンの千人隊一覧」にはセチェウルの名前は見当たりません。また、『元史』巻120列伝7には、西夏遠征の頃にフス・メリクと共にビチクチに任ぜられたと記録されています。

セチェウルは、モンゴル帝国初期において、チンギス・カンを支えた功臣の一人でした。バウルチという役職や宴会での逸話からは、当時のモンゴル社会における人間関係や権力構造を垣間見ることができます。また、千人隊長という地位や西夏遠征への参加からは、軍事面でも貢献したことが伺えます。史料によって記述が異なる点もあり、不明な点も多い人物ですが、モンゴル帝国の成立と拡大に重要な役割を果たした人物の一人であると言えるでしょう。

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