センサ付き検査用延長ブーム

センサ付き検査用延長ブーム（OBSS）とは

センサ付き検査用延長ブーム（Orbiter Boom Sensor System : OBSS）は、スペースシャトルのロボットアーム（SRMS）の先端に取り付けられる、長さ15メートルの検査用延長ブームです。先端には検査機器を収めた筐体が備わっており、シャトルの安全を確保するための重要な役割を担っています。

開発の背景

OBSSは、2003年に発生したコロンビア号の事故を教訓に開発されました。コロンビア号は、離陸時に熱防護システム（TPS）が損傷したことが原因で空中分解し、乗員全員が犠牲となりました。この事故を受け、NASAはスペースシャトルの安全性を向上させるため、TPSの損傷を検査するシステムの開発を急務としました。

その結果、開発されたのがOBSSです。2005年のディスカバリー号による「飛行再開」ミッション（STS-114）から導入され、以降のスペースシャトルミッションで活用されるようになりました。

OBSSの役割と機能

OBSSの主な役割は、スペースシャトルのTPSを詳細に検査し、損傷の有無を確認することです。もし重大な損傷が発見された場合、乗員は船外活動で修復を試みます。修復が不可能と判断された場合は、国際宇宙ステーション（ISS）にドッキングし、救出ミッションが実施されるまで待機することになります。

OBSSの先端には、テレビカメラ、2つのレーザーセンサー（LDRIとLCS）、そしてデジタルカメラが搭載されています。これらの機器を用いて、数ミリ単位の分解能で毎秒約6.3センチの速度でスキャンが可能です。これにより、シャトルの表面を詳細に観察し、微細な損傷も見逃さないように検査を行います。

検査対象

軌道投入後、OBSSによる検査は必須です。特に重点的に検査されるのは、主翼の前縁、ノーズキャップ（機首の先端）、そして乗員室です。これらの部位は、上昇中に熱や衝撃を受けやすく、損傷が発生しやすい箇所です。

上昇中に撮影された映像や、ランデブー・ピッチ・マニューバ時にISSから撮影された画像で、損傷の疑いがある場合は、さらに詳細なOBSS検査が行われます。これにより、問題点を早期に発見し、必要な対処を迅速に行うことができます。

開発への貢献

OBSSの開発には、ロボットアーム操作の第一人者であるJAXA宇宙飛行士の若田光一氏も関わっています。若田氏は、2009年3月のSTS-119ミッションで、自らOBSSの操作を担当しました。その専門知識と経験は、OBSSの開発と運用に大きく貢献しました。

シャトル引退後のOBSS

2011年にスペースシャトルが引退したことに伴い、OBSSはSTS-134ミッションでISSに設置されました。これは、ISSにあるカナダアーム2だけでは、太陽パネルの隅など届かない範囲があるためです。

OBSSをカナダアーム2の先端に接続することで、到達範囲を拡大し、より広範囲の検査や修理が可能となります。実際に、STS-120では、亀裂が入った太陽パネルを修理するためにOBSSが活用されました。

過去には、STS-123からSTS-124までの間、OBSSがISSに保管されていた実績もあります。これらの事例からも、OBSSが宇宙空間における重要なツールであることがわかります。

まとめ

センサ付き検査用延長ブーム（OBSS）は、スペースシャトルの安全確保のために開発された重要なシステムです。コロンビア号の事故を教訓に、熱防護システムの損傷を検査するために用いられ、その高度な検査機能は、スペースシャトルのミッションを安全に遂行するために不可欠でした。また、シャトル引退後もISSでの活動を支える重要なツールとして、その役割を果たし続けています。

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