セント・パンクラス駅

ロンドンの心臓部、セント・パンクラス駅：歴史と現代が交差する大ターミナル

セント・パンクラス駅は、イギリスの首都ロンドンの中心部に位置する主要ターミナル駅です。イングランド中東部への主要路線であるミッドランド本線の終着駅として、1868年に開業しました。その歴史は古く、ヴィクトリア朝時代のネオ・ゴシック様式を代表する壮麗な駅舎は、多くの旅行者にとって忘れられない印象を残します。

駅舎：宮殿のような美しさ

駅舎の設計は、著名な建築家ジョージ・ギルバート・スコット卿によるものです。左右非対称の構成が特徴的で、左翼には時計塔が配置されています。特に、プラットフォーム全体を覆う全長210メートルにも及ぶ壮大な鉄骨の大屋根（トレイン・シェッド）は、ウィリアム・バーローの設計による傑作です。この大屋根は、近年ユーロスターの乗り入れに対応するため、北側に拡張されました。

多様な路線と国際的な役割

セント・パンクラス駅は、ミッドランド本線、高速鉄道ハイ・スピード1 (HS1)、そしてテムズリンクなど、複数の国内路線のターミナル駅となっています。しかし、この駅の真価は国際列車の発着にあります。ユーロスターのロンドン側のターミナル駅として、パリやブリュッセルなどヨーロッパ大陸主要都市へのアクセスを提供しているのです。そのため、駅名の正式名称には「International」が冠せられています。

ユーロスターとセント・パンクラス駅

ユーロスターは、開業当初はウォータールー駅をロンドン側のターミナルとしていました。しかし、在来線を走行していたため速度が制限されていたことから、専用高速新線（CTRL）の建設とセント・パンクラス駅への乗り入れが決定されました。2007年11月14日、ユーロスターはセント・パンクラス駅に乗り入れを開始。これにより、ロンドンとヨーロッパ大陸間の高速移動が実現しました。このターミナル変更を記念して、ユーロスター運行会社は、ナポレオンが「ワーテルローは忘れろ！」と宣言するユーモラスな広告を展開しました。これは、ウォータールー駅名の由来であるワーテルローの戦いにちなんだものです。

駅構内と周辺環境

セント・パンクラス駅は、地上にミッドランド本線、ユーロスター、HS1のプラットフォーム、地下にテムズリンクのプラットフォームを擁する、合計15線の頭端式駅です。近隣にはキングス・クロス駅、キングズ・クロス・セント・パンクラス駅（地下鉄駅）があり、これら3駅間は徒歩で容易に移動できるよう、コンコースが設置されています。また、IATA空港コード「QQS」も割り当てられています。

保存運動とギネス記録

1960年代には、壮大な駅舎を取り壊す計画が持ち上がりましたが、詩人ジョン・ベチェマン（のちの桂冠詩人）らによる保存運動によって、この歴史的建造物は守られました。現在、駅コンコース上階には、ベチェマンの銅像が設置され、その功績を称えています。また、2008年には、下着姿の人々が駅に集まり、「パンツ姿で公共の場所に集まった人数」のギネス世界記録を更新する出来事もありました。

アクセスと接続路線

セント・パンクラス駅は、ナショナルレール（イースト・ミッドランズ・レールウェイ、テムズリンク、サウスイースタン）、ユーロスターなどの様々な路線と接続しています。また、ロンドン地下鉄（サークル線、ハマースミス＆シティ線、メトロポリタン線、ノーザン線、ピカデリー線、ヴィクトリア線）とも接続しており、ロンドン市内へのアクセスも非常に便利です。

まとめ

セント・パンクラス駅は、単なる交通機関の拠点以上の存在です。歴史的建造物としての価値、国際的な役割、そして周辺環境との調和は、ロンドンの魅力を象徴する場所と言えるでしょう。その壮大な駅舎と、現代的な交通網が融合したこの駅は、これからもロンドンの発展に貢献し続けるでしょう。

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