ゼーアドラー (帆船)

ゼーアドラー号の物語

仮装巡洋艦ゼーアドラー（ドイツ語：SMS Seeadler）は、第一次世界大戦中に活躍したドイツ海軍の艦船です。もともとは帆船であったこの艦は、商船に似せて改装され、ドイツ海軍の通商破壊戦の一環として運用されました。艦長はフェリクス・フォン・ルックナー伯爵であり、彼はこの艦の指揮を執り、「海の悪魔」と称されるほどの戦果をあげました。

ゼーアドラーの誕生

第一次世界大戦の初期、スカンジナビア半島付近でのユトランド沖海戦によって、ドイツ海軍はイギリス海軍に対して苦境に立たされていました。敵艦隊はドイツの海上に圧力をかけ、封鎖を行い、それによりドイツ経済は大きな打撃を受けました。そこで、ドイツ海軍は通商破壊戦に転じ、仮装巡洋艦を使用することを決定しました。

ルックナーはUボートの経験を持ち、また商船に化ける戦術を考案し、アメリカ船籍のクリッパー帆船パス・オブ・バルマハを捕獲し、2門の10.5cm速射砲と重機関銃を装備しました。さらに、捕虜収容用の船室や食料庫なども設け、ルックナーは艦名を「ゼーアドラー」と決定しました。

封鎖突破のための戦術

イギリス海軍の厳重な封鎖を突破するために、ルックナーは他国籍の商船に変装することを考えました。彼はノルウェー船の航海日誌を調べ、ゼーアドラーを偽装する計画を立てました。実際に出航する日、ゼーアドラーは偽装した商船の姿で旅立ち、ドーバー海峡を避けるルートで北へ向かいました。

1916年12月21日、ゼーアドラーは出航。翌年の1月には、ジブラルタル沖でイギリス船籍のグラディス・ロイヤル号を発見し、威嚇射撃を行い、捕獲後、爆沈させました。この成功により、ゼーアドラーは海の悪魔としての名を馳せていきます。

通商破壊の活動

ゼーアドラー号の主な活動は、敵の商船に接近し、突然ドイツ軍旗を掲げて威嚇射撃を行うというものでした。捕虜として移された乗員は、各船の積載物によって異なる生活を強いられました。しかし、ルックナーは捕虜を人道的に扱うことを重視し、彼らが自由に行動できる範囲を確保しました。

1917年初頭、ゼーアドラーは数隻の商船を拿捕し、沈めるという戦果を上げ続けました。その中にはイギリス、フランス、イタリアの船が含まれます。特に、かつて自身が乗ったことのある「ピンモア号」を爆沈させる場面では、感慨深い思いを抱いたといいます。

太平洋への進出

その後、ルックナーはゼーアドラーを太平洋へ移動させ、アメリカ船の攻撃を始めました。しかし、この頃には英米海軍の捜索が厳しく、自由に行動できる余裕が減少したことを実感していました。補給や休息を求めてソシエテ諸島へ向かいますが、そこで津波に見舞われ、ゼーアドラーは座礁してしまいます。

最後の運命

その後のゼーアドラーの運命については詳細が失われていますが、艦長ルックナーは捕虜の待遇を重視し、敵艦の捜索網を掻い潜って活動を続けました。ゼーアドラーはこのようにして数々の商船を沈め、ドイツ海軍の戦果を大いに増やしました。彼の英雄的な行動は、第一次世界大戦における通商破壊戦の象徴とされ、ゼーアドラー号の物語は今も語り継がれています。

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