ソッツィーニ派

ソッツィーニ派：信仰と理性の狭間を生きた人々

ソッツィーニ派は、16世紀にレリオ・ソッツィーニによって提唱され、甥のファウスト・ソッツィーニによって発展した宗教的思想潮流です。彼らは、当時主流であった三位一体説、予定説、キリストの贖罪、原罪の教義、そしてキリストの神性を否定し、教会と国家の分離（政教分離）を強く主張しました。その思想はソッツィーニ主義と呼ばれ、彼らの共同体はポーランド兄弟団、あるいは小改革派教会とも呼ばれました。

黎明期の思想

イタリア出身のレリオ・ソッツィーニは、スイスのバーゼルやポーランドで聖書研究に没頭し、初期ユニテリアン教会の指導者となりました。エラスムスの原典批判に影響を受け、聖書に対する理性的な解釈を重視しました。ソッツィーニの神学的見解は、「キリストは永遠の救いの道を教え、私たちが彼に倣うことによってその目標に到達できるように導いた救い主である」というもので、キリストを模範的な人格と捉え、その他の属性は否定しました。

ソッツィーニ派は、初期のユニテリアン主義に多大な影響を与えました。英国国教会やルーテル教会は、ユニテリアンの信徒を「ソッツィーニ派」と呼びましたが、ポーランド兄弟団の信徒たちはこの名称を拒否しました。この名称は、ミゲル・セルベトゥスの殉教を目撃したレリオ・ソッツィーニに由来します。その後、甥のファウスト・ソッツィーニがポーランドに渡り、ソッツィーニ派の指導者となりました。

ポーランドのラクフには、様々な宗派の人々、職人、医師、薬剤師、都市住民、上流階級の人々が集まりました。さらに、ポーランド、リトアニア、トランシルヴァニア、フランス、イングランドなどからも聖職者が集まり、1569年から1572年までの3年間、ラクフは神学論争の中心地となりました。その結果、ソッツィーニ派は急進的な思想を持つグループと穏健な考えを持つグループに分裂しましたが、三位一体説の否定、幼児洗礼の否定、非暴力主義、公職拒否、地獄の否定など、伝統的な教会の教義とは一線を画す独自の教義を共有していました。

ラクフ：思想の拠点

ポーランド貴族のヤン・シェイエンスキーは、ソッツィーニ教会が発展するための場所として、ラクフの町を建設しました。ラクフはソッツィーニ主義の中心地となり、1600年頃には印刷機が設置され、出版物を通じてその思想がヨーロッパ中に広められました。1602年には神学校であるラクフ大学が設立され、宗派に関係なく学生を受け入れていました。宗教の他に、外国語、倫理、経済、歴史、法律、論理学、自然科学、数学、医学、体育などの科目が教えられ、大学には大規模な図書室がありました。

迫害と亡命

17世紀に入ると、カトリック教会の影響力の増大とともに、ソッツィーニ派に対する迫害が始まりました。1628年には、ソッツィーニ主義は異端とされ、1638年には教会、学校、印刷所が閉鎖されました。ラクフ大学の所有者は印刷機で「悪を広めた」として告発され、ラクフの街は破壊されました。1658年、ポーランド議会はソッツィーニ派のメンバーに対し、3年以内の国外退去を命じました。信者の多くはオランダへ亡命し、シレジアやスロバキアへ移住して出版活動を続けました。トランシルバニアでは18世紀初頭まで教会が存続しました。

ブドニ訳聖書

ソッツィーニ派は独自の聖書を持っていました。当初はラテン語ヴルガータやフランス語からの翻訳を使用していましたが、後にシモン・ブドニに聖書の改訂を依頼しました。ブドニは全く新しい聖書の翻訳に取り組み、原語を詳細に分析し、忠実で正確な聖書翻訳を目指しました。ブドニ訳の全巻聖書は1572年に出版されましたが、出版業者による改悪を受け、2年後に改訂版が完成しました。

反応と影響

カルヴァン主義者やカトリック聖職者はソッツィーニ派に激しく反対しましたが、ジグムント2世やステファン・バトーリなどのポーランド国王が寛容であったため、ソッツィーニ派は自分たちの信条を自由に教えることができました。ヴォルテールは『哲学書簡』の中で、ソッツィーニ派について言及し、その浮沈の激しさを指摘しました。

イギリスでは、ユニテリアン教会の創始者であるジョン・ビドルや、政治思想家のリチャード・プライス、ジョゼフ・プリーストリーなどにソッツィーニ派の影響が見られます。ソッツィーニ派は、ヨーロッパ啓蒙思想の一つの源流と見なされています。

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