ソユーズ4号

ソユーズ4号ミッション：軌道上の「団結」

1969年1月14日、ソビエト連邦はソユーズ4号宇宙船を打ち上げました。ロシア語で「団結」や「統合」を意味する「ソユーズ」の名を冠したこの宇宙船には、ウラジーミル・シャタロフ宇宙飛行士が一人で搭乗しました。ミッションの主要な目的は、同時期に打ち上げられたソユーズ5号とのランデブーおよびドッキングを軌道上で行い、さらにソユーズ5号から2名の飛行士をソユーズ4号へ移乗させて地球へ帰還することでした。これは、それ以前のソユーズ計画で幾度か試みられながらも、様々な技術的課題によって成功していなかった宇宙船間ドッキングという重要なステップの達成を目指すものでした。

このミッションでは、ソユーズ4号には「アムール」、ソユーズ5号には「バイカル」という識別信号が与えられました。これらの名称は、当時建設が進められていたシベリア横断鉄道の一部、バイカル・アムール鉄道に由来しており、この宇宙飛行を通じて、国家的な大事業に従事する労働者たちを鼓舞する意図も込められていたと考えられています。

ソユーズ4号の技術的仕様は以下の通りです。

質量: 6,625kg
近地点: 213km
遠地点: 224km
軌道傾斜角: 51.7°
* 軌道周回時間: 88.8分

史上初の有人宇宙船ドッキングとEVAによる移乗

ミッションは計画通り進み、1月16日にはソユーズ4号とソユーズ5号が軌道上でランデブーし、ドッキングに成功しました。これは、史上初めて有人宇宙船同士が宇宙空間で結合した歴史的な瞬間でした。アメリカ合衆国が同様の有人ドッキング（アポロ9号）を達成するのは、この年の3月を待たねばなりませんでした。

当時、ソユーズ宇宙船には、アポロ宇宙船のように船内から直接相手の船へ移動できるような移乗トンネルはまだ開発されていませんでした。そのため、飛行士は船外活動（EVA）を行って宇宙船間を移動する必要がありました。ドッキング後、ソユーズ5号に搭乗していたエリセーエフ飛行士とフルノフ飛行士は直ちにEVAの準備を開始しました。ソユーズ5号の船長であるボリス・ボリョノフ飛行士は船内に残り、彼らが「ヤストレブ」（ロシア語で『鷹』）宇宙服を着用する様子を撮影しました。

ヤストレブ宇宙服は1965年から設計が始まり、ボスホート2号で初めて使用されたレオーノフ飛行士の経験に基づいて改良が加えられたものです。ボスホート2号で使用されたプロトタイプは技術的な課題を抱えていましたが、レオーノフ飛行士自身の助言を元に改良が進められ、1967年から製造と試験が開始されました。しかし、同年のソユーズ1号の事故や、それに続くソユーズ2号、3号のドッキング失敗により、新型ヤストレブ宇宙服の実践投入はこのソユーズ4号・5号ミッションまで見送られていたのです。

ヤストレブ宇宙服の設計上の特徴として、服の膨張を防ぎ可動性を確保するため、関節部分に滑車とケーブルが組み込まれていました。また、胸部と腹部に備えられた長方形の再生式生命維持装置は、ソユーズの小さなハッチからの出入りを容易にするよう設計されていました。

軌道35周目、エリセーエフとフルノフはソユーズ5号から船外へ出ました。これはソビエト連邦にとって二回目の宇宙遊泳となりました。EVA中、フルノフ飛行士の生命維持装置の供給線が絡まるという小さなトラブルが発生し、さらに誤って宇宙服の排気弁レバーを閉じてしまう事態も起きました。この予期せぬ出来事がエリセーエフ飛行士の注意を逸らし、宇宙船を離れる前に軌道船に設置されていた撮影用カメラの作動を忘れてしまいました。このため、この歴史的なEVAの瞬間を捉えた映像は、画質の良くないビデオ中継の記録しか残されませんでした。

ボリョノフ飛行士は、二人が船外へ出る前に生命維持装置や通信システムを最終確認し、ハッチを閉めて軌道船を減圧しました。宇宙船がソ連本国との通信が途絶える南アメリカ上空を通過している間に、まずフルノフ飛行士がソユーズ4号の軌道船へと乗り移りました。続いて、ソ連上空に戻り通信が回復する頃にエリセーエフ飛行士も無事に4号へ移乗しました。彼らが背後のハッチを閉じると、ソユーズ4号船長のシャタロフ飛行士は軌道船内部を再加圧し、二人を迎え入れました。シャタロフは軌道船に入り、二人が宇宙服を脱ぐのを手伝いました。移乗してきた飛行士たちは、シャタロフに彼が宇宙へ出発した後に発行された新聞や家族からの手紙などを手渡し、軌道上での宇宙船間移動が完全に成功したことを証明しました。タス通信はこの快挙を「相互に機能する宇宙船が誕生した…二船の電気回路は接続された。ここに搭乗員のための四つの区画を持つ実験的な宇宙ステーションが組み立てられ、機能を開始したのである」と報じました。

月計画への道と予期せぬ出来事

このソユーズ4号・5号によるドッキングとEVA移乗ミッションは、ソビエト連邦が当時計画していた有人月面着陸計画にとって極めて重要な技術実証となりました。ソ連の月計画では、月周回軌道上の母船から一人の飛行士が月着陸船で月面へ降り立ち、再び月周回軌道へ戻った後、母船とドッキングしてEVAによって母船へ帰還するという方式が想定されていました。ソユーズ宇宙船にドッキング・トンネルがなかったため、このようなEVAによる移乗技術の確立は不可欠だったのです。

ドッキング後、両宇宙船は4時間35分間にわたって結合した状態を保ちました。その後、両船は切り離され、ソユーズ4号は1969年1月17日に地球大気圏へ再突入し、カザフスタンのカラガンダから南西に約100km離れた地点に着陸しました。

宇宙から無事帰還した飛行士たちは、モスクワのクレムリンで行われる盛大な歓迎式典で、当時のソビエト連邦最高指導者であったブレジネフ書記長と面会する予定でした。しかし、この歓迎式典は予期せぬブレジネフ書記長暗殺未遂事件の発生により、急遽中止となってしまいました。犯人の男が発射した8発の弾丸は、この日式典に出席するために集まっていたゲオルギ・ベレゴヴォイ、アレクセイ・レオーノフ、アンドリアン・ニコラエフ、ワレンチナ・テレシコワといった著名な宇宙飛行士たちが乗る車に命中しましたが、幸いにも彼らに怪我はありませんでした。この事態を受け、ブレジネフ書記長を乗せた車は速度を上げ、ソユーズ4号・5号の搭乗員たちが待機していた会場を通り過ぎて立ち去ったのです。

ソユーズ4号・5号ミッションは、宇宙空間での高度な運用能力、特に初の有人ドッキングとEVAによる飛行士移乗という偉業を達成し、ソビエトの宇宙開発史に新たな一ページを刻みました。これは後の宇宙ステーション建設や、有人深宇宙探査に向けた重要な礎となったのです。

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