タジキスタンの交通

タジキスタンの交通システム：現状と課題

タジキスタンの交通インフラは、ソビエト連邦時代に建設されたものが主体であり、その後十分な投資やメンテナンスがなされなかったため、老朽化が著しいのが現状です。特に、北部と南部で地形が大きく異なるにもかかわらず、交通網の整備は地形を十分に考慮したものとは言い難く、地域間の交通の不便さが課題となっています。

鉄道

タジキスタン国内の鉄道総延長は約680kmで、軌間は1520mmの広軌です。鉄道網は主に西部の都市圏と、ウズベキスタンやトルクメニスタンといった近隣諸国を結んでいます。2000年には、南部クルガン・テッパとクリャーブを結ぶ新たな路線が建設されました。しかし、老朽化した車両や安全管理の問題、運賃体系の不備など、利用者にとって改善が必要な点が多く残されています。近年、パキスタン、タジキスタン、アフガニスタン3ヶ国間の首脳会談において、中央アジア諸国間の貿易促進のため、タジキスタン鉄道の近代化が合意されています。

道路

タジキスタンには約3万kmの道路網がありますが、その大部分は1991年以前、ソビエト連邦時代に建設されたものです。主要幹線道路は、北部ホジェンド北西部から山岳地帯を越えて南部ドゥシャンベに至るルートや、ドゥシャンベからゴルノ・バダフシャン自治州のホログを経てキルギスのオシへと続くルートなどがあります。特にホジェンドとドゥシャンベ間のルートは冬季閉鎖されるため、アンザブトンネルが建設され、迂回路が確保されました。このトンネルはドゥシャンベとタジキスタン北部を結ぶ重要な交通路となっていますが、換気システムや舗装の不足など、さらなる整備が必要な部分も残されています。

中国は、2007年時点でドゥシャンベとホジェンド間の道路の改修・拡張に約7.2億ドルを投資しており、中国の資材、労働力、技術者を活用した大規模なインフラ整備プロジェクトが進められています。また、アメリカ合衆国の投資により、パンジ川に架かるアフガニスタンとの国境を結ぶ橋が2007年に完成するなど、国際協力による道路整備も進められています。パキスタン、タジキスタン、アフガニスタンによる2009年の首脳会談では、パキスタンから中央アジアへの輸出を促進する目的で、タジキスタンを通る新たな高速道路の建設が計画されました。ゴルノ・バダフシャン自治州とドゥシャンベを結ぶ全長約1300kmの道路建設が計画されており、2009年11月に最初の会合が開催されました。

パイプライン

タジキスタンには約549kmの天然ガスパイプラインがあり、ウズベキスタンからドゥシャンベ、タジキスタン北西部への天然ガス供給を担っています。また、38kmの石油パイプラインも存在します。

港湾と運河

タジキスタンは内陸国であるため、港湾や運河は存在しません。

航空

2009年時点で、タジキスタンには26の空港があり、そのうち18は舗装された滑走路を有しています。2つの空港は3000m以上の滑走路を備えています。最大の空港はドゥシャンベ国際空港で、国際線も就航しています。ドゥシャンベとウズベキスタンのタシュケント間を結ぶ直行便はありませんが、アルマトイ経由で多くの国際都市へのアクセスが可能です。ホジェンド空港、クリャーブ空港が主要空港として機能しています。タジキスタン航空やサモンエアなどの国営航空会社、CIS諸国の航空会社が、旧ソ連圏の都市とタジキスタンを結ぶ国際線を運行しています。エア・バルティックはドゥシャンベとリガ、そしてヨーロッパの他の都市を結ぶ便を運航していますが、ウズベキスタンへの直行便はありません。ターキッシュ エアラインズ、イラン航空など、多くの国際線航空会社がドイツやロシアなどへの定期便を運航しています。しかし、フライトスケジュールの急な変更も多く、信頼性については課題が残っています。

タジキスタンの交通システムは、ソ連時代の遺産と近年の発展が混在する複雑な状況にあります。国際協力によるインフラ整備が進められていますが、老朽化や安全性の問題、効率性の改善など、多くの課題が残されています。今後、更なる投資と計画的な整備が求められます。

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