ゴルノ・バダフシャン自治州

ゴルノ・バダフシャン自治州について

ゴルノ・バダフシャン自治州は、タジキスタン東部に位置する自治州です。州都はホログで、その広大な面積は日本の東北地方とほぼ同じです。パミール高原に位置し、標高5000メートルを超える高山が連なる山岳地帯であり、主要な河川にはパンジ川があります。ムルガーブ川、バルタン川、Vanj川など、多くの川がパンジ川に注ぎ込んでいます。

地理

パミール高原北部には、イスモイル・ソモニ峰やコルジェネフスカヤ峰、モスクワ峰、インディペンデンス・ピークなどがあります。また、フェドチェンコ氷河やカラクル湖も有名です。中部には、Patkhor峰、サレズ湖、ヤシルクル湖、南部にはマヤコフスキー峰、カール・マルクス峰、Concord峰、ゾルクル湖があります。ゴルノ・バダフシャン自治州は、中華人民共和国の新疆ウイグル自治区、アフガニスタン、キルギスと国境を接しています。

歴史

中世

13世紀後半、マルコ・ポーロが中国へ向かう途中でこの地を訪れ、当時のバダフシャーン地方は「巴達哈傷」と呼ばれていたと記録されています。当時、バダフシャーンは広大な王国で、住民は独自の言語を持ち、獣皮の服を着て羊を飼っていました。王はアレクサンダー大王とダリウス王の娘の子孫とされ、「ズルカーネイン」の称号を名乗っていたそうです。街は高地にあり防御に適しており、豊かな草木、水、魚、鳥、そして良質な小麦が採れたとされています。また、良馬の産地であり、かつてはブケパロスの子孫がいたという伝説もありました。さらに、碧玉、群青、銀、銅、鉛などの鉱物資源も豊富で、特にバラス紅玉は国王が独占的に採掘していました。マルコ・ポーロは、この地の綺麗な空気と硫黄泉で病気を癒し、1年間滞在したと言われています。

近代

1881年のイリ条約で、清朝がパミール高原の一部をロシアに割譲しました。第一次世界大戦後、1924年にウズベク・ソビエト社会主義共和国が成立し、1925年に自治州が設立されました。1929年にタジク・ソビエト社会主義共和国が分離すると、同共和国に属することになりました。

冷戦時代

1950年代には、この地域に長く居住していたパミール人が、タジキスタン南西部に強制的に移住させられました。

冷戦後

1991年、ソビエト連邦からタジキスタンが独立しましたが、ゴルノ・バダフシャン自治州などではイスラム勢力や民主勢力が蜂起し、タジキスタン内戦が始まりました。

2000年代

2001年のアメリカ同時多発テロ事件後、アメリカがアフガニスタンに侵攻、2005年にはキルギスでチューリップ革命が起きました。同年、ロシア国境警備隊からタジキスタン国境保護国家委員会にアフガニスタン国境警備が移管されました。

2010年代

2010年1月、ゴルノ・バダフシャン自治州で大地震が発生し、多数の家屋が倒壊しました。2011年1月には国境画定条約により、パミール高原の一部が中国に返還されました。2012年には、政府軍による軍事行動で多数の死傷者が出ました。2014年には、麻薬業者と警察の銃撃戦が発生し、住民による抗議活動が活発化しました。また、政府は国境警備を強化し、不審な越境者の射殺や逮捕を強めました。

政治

ゴルノ・バダフシャン自治州は、国土の約半分を占めるにもかかわらず、人口はわずか3％程度で、少数派として扱われています。知事や郡の長官は住民の選挙で選ばれておらず、警察や司法の幹部も地元住民ではありません。また、パミール語のラジオ番組がないなど、言語的な差別も存在します。このため、多くの住民は政府よりもアーガー・ハーン4世を支持し、警察や司法の問題行動に対して抗議活動が頻発しています。また、政府の軍事行動に対する不信感も高まっています。

行政区分

ゴルノ・バダフシャン自治州は、以下の7つの地区に区分されています。

ダルヴァズ地区
ヴァンチ地区
ルション地区
シュグノン地区
ロシュトカリア地区
イシュカシム地区
ムルガーブ地区

産業

タジキスタンは中央アジアで最も貧しい国の一つであり、GDPの多くを海外からの送金に頼っています。ゴルノ・バダフシャン自治州は特に貧しく、多くの世帯が出稼ぎ労働をしています。

交通

首都ドゥシャンベから州都ホログまでは、パミール・ハイウェイ（M41高速）が走っています。この道路は、パミール高原南部を通り、州東部のムルガブを経て、キルギス第2の都市オシに繋がっています。また、パミール・ハイウェイを利用すれば、中国やアフガニスタンへも行くことができます。ホログからは、パミール・ハイウェイを北上し、パンジ川沿いにあるタジク＝アフガン友好橋を渡ることで、アフガニスタンへ行くことも可能です。また、パミール・ハイウェイを使わずに、ホログからクルマ峠を越えて中国のカシュガル市へ行ったり、パンジ川を南下してアフガニスタンのイシュカーシムに至ることも可能です。

住民

民族構成は、主にパミール人とキルギス人です。言語は、パミール諸語（シュグニー語、ルシャン語、ワヒ語など）、キルギス語、ロシア語、タジク語が話されています。宗教は、シーア派イスマーイール派が主流で、特にアーガー・ハーンを指導者とするニザール派が最大の非政府組織です。

日本の援助

日本は、度重なる地震で損壊した学校の改修工事や、老朽化したコミュニティセンターの改修、灌漑用水路の拡張工事など、ゴルノ・バダフシャン自治州に対し、無償援助を行ってきました。

関連事項

パミール・ハイウェイ
* ソビエト連邦の自治州

もう一度検索