ダイハツ・Bee

ダイハツ Bee：幻の三輪乗用車

ダイハツBeeは、1951年10月にダイハツ工業が発売した三輪自動車です。フロント1輪、リア2輪の2ドアノッチバックセダンという特異なスタイルを持ち、当時のダイハツにとって初の本格的な乗用車でした。

概要

Beeは、オート三輪トラックメーカーとしてのイメージが強かったダイハツが、乗用車市場への参入を目指して開発した意欲作です。低床式の乗用車専用設計シャーシ、リアエンジンのRR方式、後輪独立懸架機構など、当時の水準から見ても先進的な構造を採用していました。しかし、製品としての完成度が不十分であったため、約1年程度の短期間で生産を終了。生産台数は80台弱から300台程度と、ごく少数に留まりました。

車体は木骨ボディを架装した2ドア4人乗りセダンで、右側丸ハンドルやフロアシフト機構など、当時の一般的な4輪乗用車と同様の客室構造を備えていました。プロペラシャフトを廃したことによる低床構造がセールスポイントでした。

スタイリングは、前1輪という特異な構造から非常に個性的なものでした。アメリカのデイヴィス・ディバンという3輪自動車に類似しているという指摘もありますが、Beeはより現実的なデザインを採用していました。前ヒンジ式のドア、手回し式の窓、腕木式方向指示器など、当時の標準的な装備を備えていました。

メカニズム

Beeは、専用設計のシャーシを持ち、動力性能以外の面では、デイヴィスを凌駕する内容でした。後輪独立懸架には、当時としては珍しいダブルウィッシュボーン式を採用。これは、トヨペットSA型に次ぐ、日本車としては初期の本格的な後輪独立懸架でした。ただし、フロント1輪にはブレーキがなく、後輪ブレーキは油圧ドラム式でした。

エンジンは、Bee専用に開発された強制空冷水平対向2気筒OHVの2HA型エンジンを搭載。オート三輪用エンジンとは異なり、セルスターター始動で、オイルラインにはドライサンプ方式を採用していました。このエンジンは、かつてダイハツが試作した4輪小型トラック「FA型」用のエンジンがベースであると言われています。排気量については、540cc説と804cc説があり、詳細は不明です。ツインキャブレターを備え、燃料タンクはフロントノーズに配置されていました。

技術的・商業的敗退

Beeは、1951年9月に車名が決定し、翌10月から販売が開始されました。価格は55万円でした。関西のタクシー業界で試用されたものの、伸縮式ドライブシャフトのスプライン部の脆弱性という致命的な欠陥が露呈。発進時や悪路でシャフトが破損するトラブルが多発し、1952年までに製造中止となりました。

乗り心地は悪くなかったものの、耐久性の問題からタクシー用途には不向きであり、市販車としての発展はありませんでした。数年後にはタクシー市場から姿を消し、その後はダイハツが保管していた1台を除いて、ほとんど消息不明となりました。現在、ダイハツ本社に併設されているヒューモビリティワールドに、赤色のBeeが展示されています。また、熱心な愛好家によって走行可能な状態に復元された個体も存在します。

関連作品

Dr.スランプ アラレちゃん：劇場用短編映画に登場。

関連項目

ダイハツ・ミゼット
富士自動車・フジキャビン

参考文献

甲賀精英樹「ミツバチが街を行く」（「Old-timer」77号八重洲出版　2004年8月p28-33）

外部リンク

* ヒューモビリティワールド｜DAIHATSU @ WEB

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