ダニエル・ジョーンズ (音声学者)

ダニエル・ジョーンズについて

ダニエル・ジョーンズ（Daniel Jones、1881年9月12日 - 1967年12月4日）は、イギリスの音声学者として知られ、特に基本母音や英語の容認発音（Received Pronunciation、RP）の研究において顕著な業績を残しました。彼の生涯は、言語学と音声学の進展に大きく寄与した多くの出来事で満ちています。

生い立ちと教育

ジョーンズは1881年にロンドンで生まれ、パブリックスクールを経て、ケンブリッジ大学キングス・カレッジに入学し、数学と法律を学びました。父が弁護士であったため、自身もその道を考えていましたが、次第に外国語に強い興味を持つようになり、1905年にはフランス・パリの高等研究実習院で音声学を学びました。この時期から彼の音声学に対する情熱が芽生え、英語やフランス語の発音に関する講義を開始しました。

音声学の発展

1907年、ジョーンズはロンドン大学ユニヴァーシティ・カレッジの非常勤講師としてフランス語の音声を教え、1912年には英語の音声学科を開設しました。彼は、英語音声学を深く学ぶための「UCL Summer School in English Phonetics」を1915年に立ち上げ、このコースは現在も約100年の歴史を持つプログラムとして続いています。彼の手法はApplied Phonetic Method of Pronunciation Instructionと呼ばれるもので、発音訓練の実践を重視したものでした。

ジョーンズはまた、広東語やツワナ語、シンハラ語の音声を調査を行い、「Phonetic Reader」という文献としてまとめています。これらは多様な言語の音声に関する貴重な資料となりました。

主な業績と著作

ジョーンズの代表的な著作には、1909年に出版された『The Pronunciation of English』や1917年に発表された『English Pronouncing Dictionary（EPD）』があります。彼の音声学に関する研究は、特に英語の発音を入門的に解説したもので、英語教育における必読書となりました。

EPDでは、英語の基本母音についての概念が初めて明示され、この辞典はジョーンズの大きな成功作の一つとなりました。彼は当初、イギリスの標準発音を「Public School Pronunciation（PSP）」と呼んでいましたが、1926年以降は「Received Pronunciation（RP）」という名称に改めました。

国際音声学会、音素の概念

ジョーンズは音声学者としてだけでなく、国際音声学会の初期メンバーでもあり、1950年にはその会長に就任しました。彼は音素という概念を提唱したことでも知られており、言語の音声記号の表記に重要な影響を与えましたが、彼の理論には批判もありました。特に、基本母音に関する説明や、音素の使用においては異論が存在しました。

日本語教育への影響

また、ジョーンズの業績は日本の英語教育にも影響を与え、そのわかりやすい音声記号の体系は英語教師や学習者に広く利用されるようになりました。特に1900年代初頭から日本で使用されていたウェブスター辞典式の発音記号から、国際音声記号を用いる方向への転換がみられました。彼の研究は教育界において重要な転換期をもたらしました。

批判と評価

ただし、彼の理論は実用的には非常に有益であった一方で、音声学に関する彼の説明には批判の声が上がりました。特に彼の基本母音に対する舌の位置に関する説は、多くの反響を呼び、改善すべき点が指摘されました。それでも、彼の研究は音声学の発展に多大な影響を及ぼし、その功績は数十年を超えて後の学者たちに受け継がれています。ジョーンズが音声学を学ぶ過程やその成果は、今に至るまで多くの研究者や学生たちに引き継がれており、彼の生涯と業績は言語学の世界において忘れられないものとなっています。

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