ダビデの塔

ダビデの塔：エルサレムの歴史を物語る城塞

ダビデの塔は、エルサレム旧市街の西端、ヤッフォ門の南隣に位置する古代からの城塞です。その歴史は古く、幾度もの増改築を経て、現在の姿となりました。現在はエルサレムの歴史博物館として一般公開されており、訪れる人々にその深い歴史を伝えています。

歴史の変遷

紀元前8世紀末、エルサレムにはセンナケリブの侵略に備え、城壁が築かれました。この城壁は、ネヘミヤ記やイザヤ書にも記述があるかもしれません。紀元前2世紀には、エルサレムの市街がさらに西側の高台へと拡大し、ハスモン朝時代には最初の城壁「第一の壁」が築かれました。

ヘロデ王は紀元前37年から34年にかけ、この城壁に3つの大規模な塔を増築しました。これらの塔は、防衛の要となるだけでなく、王自身の王宮を守る役割も担っていました。最も高い塔は、かつて自害した兄を偲び「ファサエル」と名付けられました。他の二つの塔は、処刑した妃にちなみ「マリアムネ」、そして友人の一人にちなみ「ヒッピクス」と名付けられました。当時の塔の壮麗さは、フラウィウス・ヨセフスによって「全世界で最も壮麗を極めたもの」と称えられました。現在まで基部が残っているのは、これらの塔のうちの一つで、その正体はファサエルの塔かヒッピクスの塔とされています。

ローマとのユダヤ戦争中、この塔はシモン・バル・ギオラの住居となりました。紀元70年のエルサレム攻囲戦後、ローマ軍はエルサレムを破壊しましたが、3つの塔はローマ軍が打ち負かした要塞の頑健さを示す証として残され、ローマ兵たちの兵舎として利用されました。

4世紀に東ローマ帝国がキリスト教を公認すると、シタデルには修道士の共同体が形成されました。5世紀頃には、北東の塔が「ダビデの塔」と呼ばれるようになりました。この名前は、ソロモンが書いたとされる雅歌に由来し、キリスト教徒たちがこの地をダビデ王の宮殿と信じたことから、ダビデ王がこの塔から沐浴中のバテシバを盗み見たという伝説も生まれました。

638年にイスラム帝国がエルサレムを占領すると、ムスリムの統治者はシタデルを刷新しました。この要塞は、1099年の第1回十字軍の攻撃によく耐え抜きました。十字軍時代には、このシタデルは新たに建てられたエルサレム王国の宮殿を守る役割を果たしました。

1187年、サラーフッディーンによってエルサレムが占領され、シタデルもその支配下に置かれました。1239年には、アイユーブ朝によって破壊されましたが、1310年にはマムルーク朝のスルタン、ナースィル・ムハンマドによって再建され、現在の姿の大部分が形作られました。

1537年から1541年にかけて、オスマン朝のスレイマン1世によって増築され、その後400年間トルコ軍の駐屯地として利用されました。オスマン帝国時代には、ミナレット付きのモスクがシタデルの南西隅近くに建てられ、そのミナレットは「ダビデの塔」の名を受け継ぎました。

第一次世界大戦では、イギリス軍がエルサレムを占領し、アレンビー将軍がシタデル東門の外でエルサレム占領を宣言しました。イギリス委任統治時代には、エルサレム保護協会が設立され、シタデルは修繕され、コンサートや展示会などの文化施設として利用されました。1930年代にはパレスチナ民話の博物館も開設されました。

第一次中東戦争後、アラブ軍がシタデルを軍事施設として利用しましたが、1967年の第三次中東戦争でイスラエルが勝利すると、再び文化施設としての役割を取り戻しました。

博物館としてのダビデの塔

1989年、エルサレム財団によって「ダビデの塔エルサレム歴史博物館」が開館しました。この博物館は、2700年前の考古学的遺跡を含む中庭や、様々な時代のエルサレムの歴史を物語る展示室を備えています。地図、ビデオ、ホログラム、絵画、模型などを通して、エルサレムの歴史を学ぶことができます。また、城壁からはエルサレムの旧市街と新市街を一望でき、夜には音と光のパフォーマンスショーも開催されています。

この博物館は、エルサレムの歴史と文化を伝える重要な場所として、多くの人々に愛されています。

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