チャーリー・マッスルホワイト

チャーリー・マッスルホワイト

1944年1月31日にミシシッピ州コジウスコで生まれたチャーリー・マッスルホワイトは、ブルース界で異色の存在として知られるハーモニカ奏者、そして歌手です。白人でありながら、そのキャリアの初期からアメリカ南部の黒人ブルース・コミュニティに深く入り込み、巨匠たちとの交流を通じて独自のスタイルを確立しました。

幼少期、わずか3歳で家族と共にメンフィスに移り住んだマッスルホワイトは、街に根付くブルースのサウンドに触れて育ちました。13歳でハーモニカを手にした彼は、ウィル・シェイドやファーリー・ルイスといったメンフィスのブルースマンたちと共に演奏する機会を得て、その才能を磨き始めます。

18歳を迎えると、より多くの音楽的な刺激を求めてシカゴへ移住しました。シカゴは当時のエレクトリック・ブルースの中心地であり、マッスルホワイトはテレサズ・ラウンジやペッパーズ、ターナーズといったサウスサイドの有名なクラブで活動を展開します。この時期、彼はリトル・ウォルター、ロバート・ナイトホーク、サニー・ボーイ・ウィリアムソンII、キャリー・ベルといった、ブルース史に名を刻む偉大なミュージシャンたちと頻繁に共演し、貴重な経験を積みました。これらの交流は、彼のブルース観と演奏スタイルに決定的な影響を与えたと言えるでしょう。

1965年、ヴァンガード・レコードが企画したブルースのコンピレーション・アルバム『Chicago/The Blues/Today!』に、ビッグ・ウォルター・ホートンのバンドの一員として参加したことは、彼のキャリアにおける重要な一歩となりました。そして1967年、ハーヴィー・マンデルやフレッド・ビロウらを迎え、ヴァンガードから自身初のリーダー作『Stand Back! Here Comes Charley Musselwhite's South Side Band』をリリースします。

このデビュー作は、サンフランシスコのアンダーグラウンド・ラジオ局で大きな支持を得て、マッスルホワイトは活動の場をベイエリアへと移しました。フィルモア劇場のような伝説的な会場にも出演し、当時のカウンターカルチャーシーンとも交わることになります。

その後、個人的な問題も抱えながら、マッスルホワイトは必ずしも大規模なツアーを行うことはなく、ブルー・ホライゾンやクリスタルクリアといった比較的小さなレーベルから寡作ながらも質の高い作品を発表し続けました。1984年にブルー・ロケットからリリースされた『Tell Me Where Have All the Good Times Gone?』では、ギタリストのロベン・フォードを全面的にフィーチャー。前年に亡くなったマディ・ウォーターズに捧げた「Seemed Like the Whole World Was Crying」では、彼の情感あふれるハーモニカ演奏が聴かれ、ブルースマンとしての円熟した力量を示す傑作となりました。

1990年代に入り、アリゲーター・レコードに移籍してリリースした『Ace of Harps』を皮切りに、再び表舞台での活動が増加します。より積極的にツアーを行い、ファン層を拡大しました。1997年には大手ヴァージン・レコードから『Rough News』を発表。続く同レーベルからの『Continental Drifter』（1999年）では、ラテン音楽の要素を取り入れるなど、新たなサウンドへの挑戦も行っています。

1998年には、映画『ブルース・ブラザース2000』にルイジアナ・ゲーター・ボーイズのメンバーとして出演し、その存在感を印象づけました。また、1999年以降は個性派ミュージシャンであるトム・ウェイツとの親交を深め、『ミュール・ヴァリエイションズ』（1999年）をはじめとする彼の数々のアルバムにゲスト参加し、その独特な世界観にブルースの息吹を加えています。

チャーリー・マッスルホワイトは、単にハーモニカのテクニックに優れているだけでなく、ブルースの魂を深く理解し、それを表現する能力に長けたアーティストです。黒人ブルースの伝統を受け継ぎつつ、自身の経験と感性を通じた解釈で、世代を超えて多くのリスナーを魅了し続けています。

主なアルバム

1967年 Stand Back! Here Comes Charley Musselwhite's South Side Band (Vanguard)
1968年 Stone Blues (Vanguard)
1969年 Tennessee Woman (Vanguard)
1969年 Memphis Charlie (Arhoolie)
1974年 Takin' My Time (Arhoolie)
1975年 Goin' Back Down South (Arhoolie)
1975年 Leave the Blues to Us (Capitol)
1978年 Times Gettin' Tougher Than Tough (Crystal Clear)
1978年 Harmonica According to Charlie Musselwhite (Kicking Mule)
1984年 Tell Me Where Have All the Good Times Gone? (Blue Rock'It)
1986年 Mellow-Dee (CrossCut)
1990年 Ace of Harps (Alligator)
1991年 Signature (Alligator)
1993年 In My Time (Alligator)
1997年 Rough News (Virgin)
1999年 Continental Drifter (Virgin)
2000年 Up & Down the Highway Live: 1986 (Indigo)
2002年 One Night in America (Telarc)
2003年 Darkest Hour (Henrietta)
2004年 Sactuary (Real World)
2006年 Delta Hardware (Narada)
2008年 Rough Dried - Live at the Triple Door (Henrietta)
* 2010年 The Well (Alligator)

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