テオファネス (証聖者)

証聖者テオファネス

証聖者テオファネス（758/760年頃 – 817/818年3月12日）は、東ローマ帝国（ビザンツ帝国）の貴族、修道士、そして年代記者として知られています。彼は皇帝レオーン4世ハザロスに仕えた後、修道生活に入りました。787年には第2ニカイア公会議に出席し、イコン崇敬を擁護しましたが、後に皇帝レオーン5世アルメニオスがイコノクラスムを復活させた際に投獄されました。釈放後間もなく死去しましたが、正教会とカトリック教会において聖人とされ、祝祭日は3月12日です。なお、10月11日が祝祭日であるニカイアのテオファネスとは別人です。

生涯

テオファネスは、コンスタンティノープルでイコン崇敬派の裕福な貴族の家に生まれました。父はエーゲ海諸島の総督イサキオスで、母テオドラについては詳しい家名は分かっていません。3歳の時に父を亡くしたテオファネスは、皇帝コンスタンティノス5世によって宮廷で育てられ、教育を受けました。成長した彼は、レオーン4世ハザロスの元で官職を歴任しました。

12歳の時に結婚しましたが、妻を説得して純潔を守りました。779年に義父が亡くなると、宗教的な生活を送るため、妻と合意の上で離婚。妻はコンスタンティノープルに近い島の女子修道院に入り、テオファネスはアナトリア半島のマルマラ海沿い、キュジコスに近いシギアネ地方のポリュフロニオス修道院に入りました。その後、カロニモス島にある自身の領地に修道院を建設し、写本政策の技術を習得しました。

6年後、シギアネに戻ったテオファネスは大修道院を建設し、修道院長となりました。787年には第2ニカイア公会議に出席し、イコン崇敬を擁護する布告に署名しました。

しかし、レオーン5世アルメニオスが即位後にイコノクラスムを復活させたため、テオファネスはコンスタンティノープルに召喚されます。レオーン5世は公会議でイコン崇敬を非難するよう説得しましたが、テオファネスは拒否。そのために投獄され、2年にわたって過酷な扱いを受けました。817年に釈放されたものの、サモトラケへ追放され、17日後に死去しました。彼の死後、様々な奇跡が報告され、3月12日が記念日としてローマ教会の殉教者名簿に記録されました。

年代記

テオファネスは、友人のゲオルギオス・シュンケロスに依頼され、810年から815年にかけて彼の年代記の執筆を引き継ぎました。彼の文章は、教会語と俗ギリシア語の中間に位置するものでした。執筆にあたり、シュンケロスが事前に用意していた史料、テオドロス・アナグノステスが引用した文章、コンスタンティノープル市の年代記を利用しました。シリル・マンゴーによれば、年代記の製作におけるテオファネスの貢献は大きくなく、シュンケロスの業績が大部分を占めていたとされています。テオファネスの主な仕事は、シュンケロスが集めた史料をまとめて形にすることでした。

年代記中でテオファネスが記述した部分は、284年のディオクレティアヌス帝の即位から813年のミカエル1世ランガベーの没落までです。この記述には、現存しない7世紀から8世紀のビザンツ帝国の歴史家の叙述が多く引用されており、歴史的価値が非常に高いと評価されています。7世紀から9世紀のビザンツ帝国は政治・軍事的に苦境に陥り、文化・知的活動も停滞したため「暗黒時代」と表現されますが、テオファネスの年代記は、この時代についてギリシャ語で書かれたほぼ唯一の歴史記述として現代に残っています。

テオファネスの年代記は2部に分かれており、1つ目は1年ごとの歴史を記述した年代記そのもの、もう1つは年代表です。しかし、後者は不正確であり、後の誰かが出鱈目に埋めたものと見られています。年代記部分では、テオファネスは世界創造紀元から始まるキリスト教的年代と共に、ローマ皇帝、ペルシアの君主、アラブのカリフ、総主教の在位年数を併記していますが、これが混乱を引き起こす原因となっています。

年代記は、批判的な洞察や年代の正確さに欠ける部分もあるものの、他のビザンツ年代記よりも優れていると評価されています。特にユスティニアヌス2世の治世初期の記述は、現存しない文献を引用しており、貴重な情報源となっています。

テオファネスの『年代記』は後の年代記者たちにも引用され、873年から875年にかけてラテン語版も制作されました。訳者はローマ教皇の司書官アナスタシウスで、彼の翻訳によってテオファネスの著作は西ヨーロッパにも知られるようになりました。

後にコンスタンティノス7世の命により、961年までの続編が編纂されましたが、編纂者の名前は分かっていません。

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