テル・レイラン

テル・レイラン：古代メソポタミアの都市国家の興亡

テル・レイランは、現在のシリア北東部に位置する古代メソポタミア文明の都市国家遺跡です。ハブール川流域の平原に位置し、ヤラ川という涸れ川に面しています。1978年に考古学者ハーヴェイ・ワイスによって発見され、その歴史と文化が明らかになりつつあります。

シェフナからシュバト・エンリルへ

テル・レイランの地には、紀元前5000年頃には小さな農村が存在していました。その後、都市は発展を遂げ、アッカド帝国時代には「シェフナ」と呼ばれる大都市へと成長しました。しかし、紀元前2200年頃に大規模な旱魃が発生し、その影響でテル・レイランを含む北メソポタミア一帯は放棄されることとなります。この旱魃は、アッカド帝国の衰退にも影響を与えたと考えられており、気候変動が文明の盛衰に影響を与えた最古の事例の一つとして注目されています。

その後、アッシリア王シャムシ・アダド1世が北メソポタミアを征服すると、放棄されていたシェフナは再建されます。シャムシ・アダド1世は、この地の豊かな農業生産力に着目し、シェフナを自らの王国の首都としました。都市の名前は、「エンリル神の住まい」を意味するアッカド語の「シュバト・エンリル」に改められました。

シュバト・エンリルは、王宮が築かれ、市門から神殿のあるアクロポリスへと続く舗装道路が整備されるなど、都市計画に基づいて建設されました。住宅地区も設けられ、都市全体が城壁で囲まれていました。最盛期には、人口は約2万人に達したと推定されています。

楔形文字の粘土板文書

テル・レイランの発掘調査では、都市の支配者が保管していた楔形文字の粘土板文書が1100枚も発見されました。これらの文書は紀元前18世紀に遡り、メソポタミアの他の都市国家との交易記録や、都市の行政に関する情報が記されています。これらの文書は、当時の社会や経済状況を知る上で貴重な資料となっています。

衰退とその後

シュバト・エンリルは、バビロンの王サムス・イルナによる紀元前1726年の略奪を受け、その後はかつての繁栄を取り戻すことはありませんでした。その後、ミタンニ王国の支配下に入り、フルリ人の地方都市として存続しました。

テル・レイランの発掘調査は現在も継続されており、古代メソポタミアの都市国家の歴史や文化を解明するための重要な手がかりを提供しています。

参考文献

The Climate of Man -- II: The curse of Akkad. Elizabeth Kolbert. The New Yorker. May 2, 2005.
Marc van de Mieroop: The Mesopotamian City. Oxford University Press 1999. ISBN 0-19-815286-8
Science Direct, Quarternary Research, Volume 67, Issue 3 (May 2007), pp. 337-348, Fluvial Environmental Contexts for Archaeological Sites in the Upper Khabur Basin (northeastern Syria)

外部リンク

Tell Leilan project

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