ヨトウガ

ヨトウガ：広食性害虫の生態と農業への影響

ヨトウガ(Mamestra brassicae)は、チョウ目ヤガ科に属する昆虫で、その幼虫であるヨトウムシは、世界中の農作物に深刻な被害を与えることで知られています。本稿では、ヨトウガの形態、生態、そして農業における被害について詳細に解説します。

形態

成虫のヨトウガは、体長約15～20mm、翅の開張約45mmの灰褐色から黒褐色の蛾です。翅には不明瞭な白色の斑紋が見られます。卵は直径約0.6mmの扁平な球形で、乳白色をしており、卵塊として産み付けられます。

ヨトウムシは、体長が成長すると40～50mmに達します。頭部は黄褐色で暗褐色の斑紋があり、胴部は灰黒色、暗褐色、暗緑色などで、多数の小さな黒点があります。幼虫には刺毛はなく、表面は滑らかです。蛹は土中で形成され、褐色で体長約18～22mmになります。

生態

ヨトウガは一般的に年に2回発生しますが、地域によっては3回発生することもあります。蛹態で越冬し、4月下旬から羽化が始まり、交尾と産卵が行われます。卵は夜間に、数十から数百個の塊で葉の裏に産み付けられ、高温少雨の条件下では産卵が活発になります。

孵化したヨトウムシは、最初は葉の裏で集団で加害しますが、3齢期以降は分散し、日中は土中や株元に潜み、夜間に活動して葉を食害します。6齢幼虫まで成長すると、葉に穴を開けながら盛んに摂食し、この齢期の食害が全体の約90％を占めます。その後、地中で蛹化し、夏眠します。しかし、冷涼な地域では、幼虫の発生は断続的に続きます。

9月～10月には再び羽化し、10月～11月には幼虫が発生します。その後、地中で蛹化して越冬します。

被害

ヨトウガは非常に広食性で、イネ科以外の多くの植物を加害します。特に被害の大きい作物としては、アブラナ科（キャベツ、ハクサイなど）、マメ科（エンドウなど）、アカザ科（テンサイ、ホウレンソウなど）、キク科（レタス、ゴボウなど）、ナス科（ジャガイモ、ナス、ピーマンなど）、ユリ科（ネギなど）、ウリ科（キュウリなど）、セリ科（ニンジンなど）、バラ科（イチゴなど）などが挙げられます。さらに、タケニグサなどのケシ科植物も食草としています。

ヨトウムシによる被害は5月～11月ごろに発生し、初期の幼虫は集団で加害しますが、3齢以降は分散し、夜行性になります。

まとめ

ヨトウガは、その広食性と旺盛な食欲から、世界中の農業において重要な害虫とされています。その生態を理解し、適切な防除対策を講じることで、農業被害を軽減することが重要です。今後の研究においては、より効果的な防除方法の開発や、気候変動がヨトウガの分布や発生に及ぼす影響の解明などが課題となります。

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