テーバイド

テーバイド（Thebaid）についての詳解

『テーバイド』は、古代ギリシアと古代ローマのそれぞれで異なる内容を持つ叙事詩です。最初の『テーバイド』はギリシア語で記された作品であり、次に触れるスタティウスの『テーバイド』はラテン語で作成されましたが、いずれもテーバイを舞台にした兄弟の対立をテーマにしています。

古代ギリシアのテーバイド

古代ギリシアの『テーバイド』は、数少ない断片が残っているだけの作品で、主にオイディプースの子供たち、エテオクレースとポリュネイケースの間で繰り広げられる戦争を描写しています。この叙事詩はホメーロスによるものとされていることもありますが、詳細は明らかではありません。詩の中では、兄弟の激しい対立とその影響を受けたテーバイの人々の運命が語られ、戦闘に突入します。この作品は、叙事詩という文学形式が持つ歴史的重要性を示唆しています。

スタティウスのテーバイド

次に、古代ローマの詩人スタティウスによる『テーバイド』について述べます。スタティウスの『テーバイド』は、1世紀末のラテン語白銀期に成立した作品で、彼がドミティアヌス帝の治世のもとで執筆したことがわかります。この詩はヘクサメトロス形式で書かれており、古代ギリシアの叙事詩やアイスキュロスの戯曲『テーバイ攻めの七将』とも関連があります。

作品の中心となるのは、エテオクレースとポリュネイケースの兄弟の争いです。テーバイを交替で統治する約束を結んでいる兄弟ですが、エテオクレースの統治が続く中で、ポリュネイケースはテーバイの権力を求めて挑戦を始めます。スタティウスは、この兄弟の不和を物語の核に据え、各々のいてつき合いがどのようにテーバイ全体に影響を与えるのかを描写します。

また、スタティウスは神々をストーリーの重要な要素として巧みに取り入れています。例えば、アドラーストスはアポロの司祭であり、テーバイそのものが祭神バックスに捧げられた地でもあります。作品では神々が戦の運命に直接的または間接的に関与し、ドラマに新たな対立を生む様子が展開されていきます。

スタティウスの描く神々は、ホメーロスやウェルギリウスの神々とは異なり、より寓話的に描かれています。C・S・ルイスは、スタティウスの神の描写が中世における寓意的詩の先駆けとなると考えました。

受容と影響

スタティウスの『テーバイド』は、彼の生存中に多くの人気を集め、学生たちは詩の全編を暗記するほどでした。また、ドミティアヌス帝からの支持も作品の評価を高めた要因となりました。後の文献にも影響を及ぼし、11世紀後半にはフランス語のロマンス詩『Le Roman de Thèbes』がスタティウスを根拠にして書かれました。

14世紀には、ジョヴァンニ・ボッカッチョが『Teseida delle nozze di Emilia』という叙事詩を書き、その中でスタティウスの作品からの引用が見られます。この流れは、ジェフリー・チョーサーの『カンタベリー物語』の一部にも影響を与え、シェイクスピアやジョン・フレッチャーの戯曲にもその影響は及びました。

スタティウスの『テーバイド』は、古典文学に深い影響を与え、兄弟の愛憎、神々の介在といったテーマが、多様な文学作品に息づいています。この叙事詩は、古代から現代にかけての物語性や人間の感情の意義を考えさせる貴重な作品となっていると言えるでしょう。

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参考文献:

• - West, Martin L. (2003). Greek Epic Fragments. Harvard University Press.
• - Ross, Charles Stanley. Seven Against Thebes: the Thebaid.

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