デジタルブック (NEC)

デジタルブック (DIGITAL BOOK)

デジタルブックは、NECが1993年に発売した電子書籍です。「読書の新しいスタイルの創造」をコンセプトに、専用端末やPC-9800シリーズで手軽に読書できることを目指しました。

概要

デジタルブックのソフトウェアはフロッピーディスクで提供され、専用の読書端末、もしくはPC-9800シリーズで閲覧できました。専用端末は文庫本1ページほどの大きさで、大きめの文字表示により片手で読書できる点が特徴でした。

デジタルならではの機能も充実しており、目次からのジャンプ機能、しおり機能、文字の拡大、文字検索に加え、文章へのマーカーやマスク、切り抜き機能なども搭載されていました。

当時普及していたフロッピーディスクをメディアに採用し、1993年11月の発売時には80タイトル以上のソフトが用意されました。伊達公子を起用したテレビCMも展開されました。

ハードウェア

デジタルブックプレーヤ DB-P1

1993年11月に発売された専用端末です。5.6インチ、320x400ドットのモノクロ液晶を搭載した縦型デザインで、画面下部と右側に操作ボタンが配置されています。デジタルブックは3.5インチフロッピーディスクで提供されますが、本体にはドライブが内蔵されていないため、外付けドライブを使用します。

容量はデジタルブック1冊分のみで、内蔵OSはMS-DOS ver 3.10です。電源は単3電池4本、オプションの専用バッテリー、またはACアダプターを使用します。アルカリ電池使用時の駆動時間は約4時間、専用バッテリーでは約2.5時間でした。発売時の価格は2万9800円で、1994年のグッドデザイン賞を受賞しています。

フロッピィディスクユニット DB-P1-02

別売りのフロッピーディスクユニットです。PC-98シリーズとも互換性があり、PC-98側で電子書籍を読んだり、PC-98で作成したテキストを転送して端末で表示したりできました。発売時の価格は1万2800円でした。

デジタルブックプレーヤ DB-P2

DB-P1の後継機として1996年3月に発売されました。基本的な機能はDB-P1から引き継ぎつつ、本体の薄型軽量化を実現しています。操作ボタンは画面下部にまとめられ、アルカリ電池使用時の駆動時間は10時間と大幅に向上しました。容量もデジタルブック2冊分に増加しています。

また、赤外線通信機能を搭載し、2台揃えることで囲碁や将棋の対局も可能になりました。発売時の価格は3万9800円で、1996年のグッドデザイン賞を受賞しています。

ソフトウェア

発売開始時には84タイトル、最終的には200タイトル以上のデジタルブックが発売されました。

小説では、安部公房の作品や田中康夫の『なんとなく、クリスタル』、綾辻行人の『迷路館の殺人』などが提供されました。その他、大岡信の『折々のうた』や朝日新聞社の『天声人語』なども発売されています。

囲碁、将棋、麻雀、テトリス、オセロなどのゲームソフトも提供され、特に囲碁関連の書籍が充実していました。

デジタルブックを作成できる編集ツールキットや、PC-VANにアクセスするための通信ソフトウェアも発売されました。

評価

デジタルブックは、世界初の読書端末の一つと言われています。特に「デジタルブック囲碁セット」の発売など、囲碁端末としての評価が高かったようです。セガのカラオケ事業においては、収録曲リストが紙の本からタブレットに移行するきっかけになったとも言われています。

しかし、販売台数は伸び悩んだとされ、長谷川秀記は「早すぎた」と評しています。

関連情報

* デジタルブック研究会 編著『小さなマルチメディア : デジタルブックのおもしろ世界』 NECクリエイティブ、1995年9月、ISBN 4-87269-015-X

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