デルモニコス

米国ニューヨーク市のフィナンシャル・ディストリクトに所在する、長い歴史を持つ高級レストランです。19世紀から20世紀初頭にかけて、デルモニコ家が経営するこの店は、国内で最も優れたレストランの一つとして高い評価を確立しました。料理やサービスの提供方法において、アメリカにおける近代的な外食文化の礎を築いた存在とされています。

創業とその歴史

デルモニコスの起源は、スイス・ティチーノ出身のジョンとピーター・デルモニコ兄弟が、1827年にニューヨークのウィリアム・ストリートで開いた菓子店にさかのぼります。1830年には飲食を提供するレストランとしてのサービスを開始し、翌1831年には彼らの甥にあたるロレンツォ・デルモニコが加わり、特にメニュー構成やワインの選定において重要な役割を担いました。店舗は何度か移転を繰り返した後、1837年に現在のサウス・ウィリアム・ストリートに落ち着き、壮麗な建築の店として再オープンしました。この時、入口の柱はポンペイから運ばれたと説明され、開業当初から大きな注目を集めました。

隆盛期と多店舗展開

1850年代に入ると、デルモニコスは社交の中心となり、ニューヨーク・ニューイングランド協会のような重要な組織の年次会など、数多くの著名な集まりの会場となりました。1860年には、当時英国皇太子であったエドワード7世を迎えた大規模な晩餐会を東14丁目の音楽学校で開催し、特別に設えられた空間で提供されたフランス料理と豪華な飾り付けは、ニューヨーク・タイムズ紙にも絶賛されるほどでした。1862年には、当時の料理界で最も偉大な一人と称されたシェフ、チャールズ・ランフォーファーが招かれ、料理の質を一層高めました。1865年から1888年までの期間は特に事業が成功し、ニューヨーク市内に同時期に4店舗を展開するなど拡大を続けました。様々な時代を通じて、デルモニコスという名前を持つレストランは合計で10軒に達しました。しかし、時代の変化と共に、5番街にあった店舗が1899年に閉鎖されるなど変化が見られ始めます。1919年に新たな経営者に引き継がれた後、禁酒法の影響などから食事の習慣が変化し、5番街44丁目にあった最後のオリジナル店舗は1923年に閉店しました。

名称の継承と復活

デルモニコ家による経営が終わった後、「デルモニコス」の名を冠する店がいくつか現れましたが、デルモニコ家が名称の独占使用を主張したのに対し、裁判所は店舗の閉鎖によって名称は公共の財産となったとの判断を下しました。しかし、伝統は途絶えませんでした。1929年、オスカー・トゥッチがかつてのサウス・ウィリアム・ストリートの店舗跡地に「オスカーズ・デルモニコス」を開店させ、オリジナルのメニューやレシピを復活させました。この店は多くの政治家や有名人を惹きつけ、1977年まで営業を続けました。その後も、1981年から1992年までエド・フーバーによる経営を経て、1998年からはバイス・グループが料理長のギアン・ピエトロ・ブランチと共に再びデルモニコスとして営業を再開。現在は56 ビーバー・ストリートとして、創業の地にほど近い場所でその伝統を守り続けています。

食文化への貢献

デルモニコスは、現代のレストランサービスの標準となった革新をいくつも導入しました。アメリカで初めて、定食ではなく個々の料理をメニューから選べる「アラカルト」形式を採用した店の一つとされています。また、個別のワインリストを提供した最初のレストランであるとも主張されています。料理の面でも、数々の名料理を生み出しました。特に有名な「デルモニコ・ステーキ」は、この店を象徴する一品です。「ロブスター・ニューバーグ」や「デルモニコ・ポテト」もデルモニコス発祥の料理とされています。また、デザートの「ベイクド・アラスカ」はデルモニコスで命名されたものであり、「チキン・ア・ラ・キング」や「エッグベネディクト」も、他の説があるものの、この店に関連付けられることがあります。スープの「マンハッタン・クラム・チャウダー」も、ニューヨークのデルモニコスで最初に提供されたと言われています。

著名な顧客たち

デルモニコスのダイニングルームは、歴史上の多くの著名人が訪れる場所でした。オペラ歌手のジェニー・リンド、セオドア・ルーズベルト大統領、作家のマーク・トウェインやチャールズ・ディケンズ、作曲家のアーサー・サリヴァン、財界人のジョン・モルガン、発明家のニコラ・テスラ、さらには英国皇太子時代の後のエドワード7世やナポレオン3世といった王侯貴族までが常連客として知られています。特にチャールズ・ディケンズは、かつてアメリカの料理を批判したことがありましたが、1867年にデルモニコスでの晩餐会でチャールズ・ランホーファーの料理を味わい、そのレベルの高さに感銘を受け、自著での批判を撤回し、この店の料理とサービスを絶賛したエピソードが残されています。また、ジャーナリストのジェイコブ・リースは、まだ貧しかった頃に店のコックが窓からパンを恵んでくれたという逸話を語っています。

文化作品における登場

デルモニコスは、その名声から様々な文学や映画、舞台作品にも登場しています。映画では『若草の頃』（1944年）、『ライフ・ウィズ・ファザー』（1947年）、西部劇『黄色いリボン』（1949年）などで言及されました。ミュージカル『ハロー・ドリー！』の劇中歌では、ニューヨークを象徴する場所として歌われています。F・スコット・フィッツジェラルドの小説『メーデー』やイーディス・ウォートン作『エイジ・オブ・イノセンス』、ケイレブ・カーの『精神科医』などにも登場人物が訪れる場所として描かれています。また、西部劇テレビドラマ『ガンスモーク』ではレストラン名にその名前が使用され、エルヴィス・プレスリーが出演した1966年の映画『フランキー・アンド・ジョニー』の歌にもその名が刻まれています。

その他のデルモニコス

ニューヨークの象徴であったデルモニコスの名は、他の場所や建物にも見られます。ルイジアナ州ニューオーリンズには1895年に開業した同名のレストランがあり、1997年に著名シェフ、エメリル・ラガッシが取得し、「エメリルズ・デルモニコ」として現在も営業しています。また、ニューヨーク市のパーク・アベニューにあったデルモニコス・ホテルは、1964年にビートルズが滞在した際に熱狂的なファンの中心地となりましたが、フィナンシャル・ディストリクトのレストランとは経営的に無関係です。

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