トゥガン・ソヒエフ

トゥガン・ソヒエフ：北オセチアが生んだ世界的指揮者

トゥガン・タイムラゾヴィチ・ソヒエフは、1977年10月21日に北オセチアのウラジカフカスで生まれました。技術者と教師を両親に持ち、7歳からピアノを始め、音楽の才能を開花させました。ゲルギエフ記念ウラジカフカス芸術学校を経て、サンクトペテルブルク音楽院でイリヤ・ムーシン、ユーリ・テミルカーノフという名匠に師事し、指揮者としての基礎を築きました。

若き才能の開花と躍進

1999年、第3回プロコフィエフ国際コンクールの指揮部門で最高位を受賞。2001年12月には、マリインスキー劇場でデビューを果たし、その後も同劇場と密接な関係を築きます。2001年2月にはアイスランド・オペラで『ラ・ボエーム』の新演出を指揮し、9月にはウェールズ・ナショナル・オペラでも同作品を演奏。同年12月には、ウェールズ・ナショナル・オペラの音楽監督に就任することが発表されました（ただし、2004年に任期途中で辞任）。

国際舞台での活躍

2005年からはトゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団の首席客演指揮者兼音楽アドヴァイザーに就任。2008年から2022年まで同楽団の音楽監督を務めました。また、2012年から2016年までベルリン・ドイツ交響楽団の首席指揮者、2014年から2022年までボリショイ劇場の音楽監督を歴任するなど、名門オーケストラや歌劇場の要職を歴任し、国際的な評価を確立しました。

フィルハーモニア管弦楽団、スウェーデン放送交響楽団、フランクフルト放送交響楽団、フランス国立管弦楽団、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団、パリ管弦楽団など、世界各国の著名なオーケストラに客演。2009年にはズービン・メータの代役としてウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会にデビューし、2010年にはベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会に登場するなど、トップオーケストラとの共演も果たしています。

日本との縁

日本では、2008年にNHK交響楽団を指揮してデビュー。その後も定期的にN響に客演し、日本の音楽ファンを魅了しています。2016年には、サントリーホールで行われたN響の定期公演で、エリザーベト・レオンスカヤとベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番を共演しました。2017年、2019年、2021年、2023年、2024年とN響への客演を重ね、その才能を日本の聴衆に示しています。

苦渋の決断

2022年のロシアのウクライナ侵攻を受け、ソヒエフは「ヨーロッパでロシア音楽・芸術家が "キャンセル文化" の犠牲になっていること」「愛するロシアの音楽家たちと愛するフランスの音楽家たちのどちらかを選ぶという不可能な選択を迫られたこと」を理由として、ボリショイ劇場とトゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団の音楽監督を辞任しました。この決断は、音楽界に大きな波紋を広げました。

ディスコグラフィー

ソヒエフは、ロシア交響楽団やトゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団との録音を多数リリースしており、特にロシア作品の解釈には定評があります。2004年のエクス＝アン＝プロヴァンス国際音楽祭で指揮した『3つのオレンジへの恋』は映像化もされています。

トゥガン・ソヒエフは、その卓越した音楽性と情熱的な指揮で、世界中の聴衆を魅了し続けています。今後の活躍がますます期待される、注目の指揮者です。

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