トダ・モンケ

トダ・モンケ：ジョチ・ウルスの謎多きハン

トダ・モンケ（生没年不詳）は、ジョチ・ウルスの第7代ハンとして、1280年頃から1287年まで在位しました。彼はバトゥの次男トクカンの三男であり、先代のモンケ・テムルとは同母兄弟にあたります。

生い立ちと即位

トダ・モンケの母は、オイラト部族出身のクチュ・ハトゥンです。クチュ・ハトゥンはチンギス・カンに帰順したオイラト部族の首長クドカ・ベキの孫にあたります。彼女はモンケ・カアンの妃であるオグルガイミシュや、フレグの妃であるオルジェイ・ハトゥンといった、有力者と縁戚関係にありました。

1280年頃、モンケ・テムルの死後、本来であればその息子が後継者となるはずでしたが、ジョチ・ウルスの実力者であるノガイとコニチによって、トダ・モンケがハンに擁立されました。当時、シリギの乱や中央アジアの緊張など、ジョチ・ウルスは多くの問題を抱えており、ノガイらはモンケ・テムルの息子たちでは対応が難しいと判断したと考えられます。

1282年には、シリギがバヤンに降伏し、トダ・モンケ、ノガイ、コニチは協議の結果、クビライの皇子を大元ウルスへ送還しました。

廃位とその後

しかし、この即位に不満を持つ王族たちが現れます。モンケ・テムルとトダ・モンケの異母兄の子であるトレ・ブカ、コンチェク兄弟、そしてモンケ・テムルの息子であるアルグイとトグリルチャの4人は、トダ・モンケがイスラム神秘主義に傾倒していることを理由に、1287年にクーデターを起こし、彼を廃位してしまいます。

その後、トレ・ブカをハンとする4王族による支配と、アルグイの弟であるトクタ、そして彼を保護したノガイらの間で、激しい権力闘争が繰り広げられることになります。

廃位後のトダ・モンケの消息は不明です。

家族

トダ・モンケには、コンギラト部族出身のアルカチとアルチという2人の正妃がいました。また、トレ・クトルグという側室もいました。息子としては、アルカチから生まれたウズ・モンケ、トレ・クトルグから生まれたチェチェクトゥ、そしてトベデイという息子が知られています。

イスラム教への傾倒

14世紀の歴史家ヌワイリーの記録によれば、トダ・モンケは兄のモンケ・テムルと同様に、イスラム教に深く帰依していたと伝えられています。彼は即位後も国政には関わらず、イスラム神秘主義の導師や修行者たちと交流し、イスラムの教えを遵守していたとされています。

トダ・モンケは、ジョチ・ウルスの激動期にハンとして擁立され、その短い治世の中で、イスラム教への傾倒と、それに伴うクーデターによって廃位された、数奇な運命を辿った人物でした。彼の生涯は、ジョチ・ウルスの権力闘争と宗教的背景を理解する上で、重要な手がかりとなります。

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