トマス・ハリソン (軍人)

トマス・ハリソン：清教徒革命と栄光と死

トマス・ハリソン(1606年-1660年)は、17世紀イングランドを揺るがした清教徒革命において重要な役割を果たした軍人、政治家でした。低い身分から出発しながら、類まれな才能と政治的野心によって、イングランドの運命を左右するほどの地位に上り詰めました。しかし、その急進的な思想と政治的判断は、彼を頂点から奈落の底へと突き落とすことになります。

ハリソンはスタッフォードシャーの肉屋または牧畜業者の息子として生まれました。法学院で学んだ後、1642年に勃発した第一次イングランド内戦に議会派として参加します。幾多の戦場を転戦し、その勇敢さと軍事的な才能で頭角を現わしていきました。特に1645年に創設されたニューモデル軍に所属してからは、ネイズビーの戦いで活躍し、騎兵連隊長に昇進するなど、軍における地位を確固たるものにしていきました。

軍事功績に加え、ハリソンは政治的にも活動範囲を広げていきます。1646年には下院議員に選出され、急進派として台頭しました。チャールズ1世の処刑を主張し、裁判では死刑執行令状に署名するなど、過激な行動も厭いませんでした。

第三次イングランド内戦では、オリバー・クロムウェルの下でスコットランド軍を率いるチャールズ2世の進軍を阻止するために奮戦、ウスターの戦いでも重要な役割を果たしました。その後、国務会議委員に選ばれ、急進派である第五王国派にも加わります。クロムウェルの国王即位問題では反対を表明し、第一次英蘭戦争では第五王国派の支持を得ながら賛成に回ったなど、政治的な立場は常に流動的でした。

ハリソンはクロムウェルに接近しつつも、その立場を利用して独自の政治勢力を構築しようとしました。軍の士官会議を自派の人間で固め、ランバートと並ぶクロムウェルの有力者となります。ランプ議会解散をクロムウェルに繰り返し訴え、ついに1653年4月、クロムウェルの支援を得てクーデターを実行、ランプ議会を解散に追い込みます。このクーデターはハリソンの政治的キャリアにおける頂点でした。

その後、ベアボーンズ議会が開会し、ハリソン自身も議員に選出されました。しかし、ベアボーンズ議会は急進的な改革を推し進めすぎ、他の派閥と対立。政権運営は混乱し、クロムウェルからの信頼も失っていきます。結果、ベアボーンズ議会はわずか5ヶ月で解散、ハリソンは軍から追放されてしまいます。

クロムウェルの護国卿時代には反対派として活動し、投獄されることになります。そして1660年、王政復古が成立すると再逮捕され、チャールズ1世の処刑に関与した罪で、王殺しの罪に問われ、極刑である首吊り、内臓抉り、四つ裂きの刑で処刑されました。ハリソンの生涯は、清教徒革命という激動の時代を象徴する、栄光と悲劇に満ちたものでした。彼の急進的な思想と大胆な行動は、イングランドの歴史に大きな足跡を残しました。しかし、その激しさゆえに、最後は悲劇的な結末を迎えることになったのです。

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