トモセラピーとは？意味をやさしく解説

トモセラピーとは

トモセラピー（TomoTherapy）は、強度変調放射線治療（IMRT）と画像誘導放射線治療（IGRT）を統合した、高精度放射線治療システムです。CTスキャナと一体化されたIMRT専用の放射線治療装置で、アキュレイ社によって開発・製造されています。このシステムは、リニアック（線形加速器）がリング状のガントリー内を連続回転しながら放射線を照射する点が特徴で、がんの形状に合わせて線量分布を最適化できます。

トモセラピーの基本原理

トモセラピーでは、患者を寝かせた状態で、リング状のガントリー内部をリニアックが回転し、中心に向かって放射線を照射します。この際、高性能コンピュータシステムによって多葉コリメータ（MLC）の動きを制御することで、線量集中性を高め、正常組織への被曝を低減します。さらに、治療前にCT画像を撮影し、照射位置を修正することで、より正確な放射線治療を可能にします。

トモセラピーの特徴

トモセラピーは、従来の放射線治療装置と比較して、以下の特徴があります。

画像誘導放射線治療（IGRT）: 毎回の治療前にCT画像を撮影し、患者の位置を正確に補正することで、照射位置の誤差を最小限に抑えます。
強度変調放射線治療（IMRT）: 多葉コリメータ（MLC）を制御することで、腫瘍の形状に合わせた線量分布を形成し、正常組織への被曝を低減します。
360°連続回転照射: ガントリーが360度回転しながら照射することで、多方向からの照射を可能にし、線量集中性を高めます。
高精度な線量分布: コンピュータ制御により、線量集中性が高く、線量均一性の高い線量分布を形成できます。
治療計画の柔軟性: 治療計画時に照射角度を意識する必要がなく、計画者の負担を軽減します。
トモダイレクト機能: リニアックを固定した状態での照射も可能で、全脳全脊髄照射や全身照射にも対応できます。

IGRTの詳細

従来の放射線治療では、皮膚表面のマーキングを基に照射位置を設定していましたが、IGRTでは治療前にCT撮影を行い、画像情報を利用して患者の位置を補正します。これにより、セットアップ時の誤差を減らし、より正確な照射が可能になります。トモセラピーでは、MVCTと呼ばれる特殊なCT画像を用いて位置補正を行いますが、画質は低いものの、金属アーチファクトの影響を回避できる利点があります。

IMRTの詳細

トモセラピーは、IMRTにおいて、線源を360度回転させることで、多門照射を実現しています。これにより、従来の治療装置よりも腫瘍への線量集中性を高め、正常組織への線量を低減できます。また、治療計画において照射角度を考慮する必要がなく、計画者の負担を軽減できます。

多葉コリメータ（MLC）

トモセラピーでは、64枚のタングステン製のMLCを使用しており、このMLCは開閉の2つの状態しか持たないバイナリMLCと呼ばれるものです。MLCの開いている時間を調整することで、ビームの強度を変調させ、最適な線量分布を形成します。

治療計画

トモセラピーの治療計画は、インバースプラニングという手法を用い、コンピュータで最適なMLCの開閉時間を算出します。近年では、VoLOという高速計算手法が導入され、治療計画の作成時間が大幅に短縮されています。

トモセラピーの適応

トモセラピーは、以下のような疾患の治療に用いられます。

脳腫瘍
頭頸部腫瘍
肺癌
悪性中皮腫
直腸がん
肛門がん
乳がん
子宮頸がん
前立腺がん
膵臓がん
白血病
悪性リンパ腫
各種固形がんのリンパ節転移
転移性骨腫瘍

トモセラピーの歴史

トモセラピーは、1990年代半ばにThomas Rockwell Mackieによって構想され、2002年にFDAの認可を受けました。日本では2005年から導入が開始され、現在では多くの施設で利用されています。

その他の情報

トモセラピーは、高精度な放射線治療を実現する一方で、適応外の疾患や副作用のリスクも存在します。そのため、治療にあたっては、医師との十分な相談が必要です。

日本国内のトモセラピー稼働施設（一部）

東京都立駒込病院
北斗病院
札幌医科大学附属病院
木沢記念病院
名古屋第二赤十字病院
愛知県がんセンター
日高病院
宇治武田病院
江戸川病院
済生会熊本病院
佐久総合病院佐久医療センター
相澤病院
山梨大学医学部附属病院
十和田市立中央病院
クリニックC4
古賀病院21
福井県済生会病院
北福島医療センター
一宮市立市民病院
湘南鎌倉総合病院
鈴鹿中央総合病院
寿泉堂綜合病院
野崎徳洲会病院
南部徳洲会病院
水戸協同病院
滝宮総合病院
和歌山県立医科大学附属病院
春日井市民病院
大阪市立総合医療センター
宇都宮セントラルクリニック
原三信病院

トモセラピー