トヨタ・ジャパンタクシー

ジャパンタクシー（JPN TAXI）

ジャパンタクシーは、トヨタ自動車が販売するユニバーサルデザインタクシーです。この車両は、トールワゴン型のハイブリッド商用車として、また2シーターのライトバンとしても展開されています。特に、世界初のLPGハイブリッド車である点が大きな特徴です。

概要

2013年の東京モーターショーに出展された「JPN TAXI Concept」を基に開発され、1995年から販売されていたコンフォートやクラウンコンフォートといったセダン型タクシーの後継車として、2017年に市場投入されました。トヨタ車として初めて、国土交通省の定めるユニバーサルデザインタクシーの要件を満たした車種として認定されています。

車名はアルファベット表記で「JPN TAXI」ですが、読み方は「ジャパンタクシー」です。一般的には「ジャパン」や「ジャパタク」という通称でも知られています。生産は、当初はトヨタ自動車東日本東富士工場で行われていましたが、2020年12月に同工場が閉鎖されたため、現在は宮城大衡工場に移管されています。

タクシー専用車として設計されたものの、一般ユーザーも購入して自家用車として登録することが可能です。また、自動車教習所では普通自動車第二種免許の教習車としても導入されています。

年表

2013年11月5日：「第43回東京モーターショー2013」で「JPN TAXI Concept」を参考出品。
2015年10月26日：次世代タクシーの概要を発表、2017年度内の発売と全国のトヨタ店、トヨペット店での販売を発表。
2017年10月23日：「JPN TAXI（ジャパンタクシー）」として発売。キャッチコピーは「次の日本に、いらっしゃいませ。」
2018年4月1日：衝突回避支援パッケージの名称を「Toyota Safety Sense C」から「Toyota Safety Sense」に変更。
2018年5月：香港市場向けを発表。当初の車名は『コンフォートハイブリッド』。
2018年12月8日：コイアイ（ext）×クロコハク（int）の組み合わせが、オートカラーアウォード2018審査委員特別賞を受賞。
2019年2月4日：車いす乗降改善対応を発表。既販車を対象にスロープの改良、カラビナの無料提供、収納ポケットの配布などを行った。
2019年3月15日：一部改良。スロープの形状変更、プリクラッシュセーフティ機能の追加、パワースライドドアの高速化、料金トレイの位置変更など。
2020年1月7日：排出ガスと燃料消費率がWLTCモードに対応、スロープの耐荷重を200kgから300kgに変更。
2020年12月10日：東富士工場での生産を終了。
2021年1月4日：宮城大衡工場へ移管、生産を開始。
2021年5月10日：一部改良。「ナノイー」から「ナノイーX」へ変更、ハーフシートカバーの追加、アクセサリーコンセントの設定など。
2022年5月13日：一部改良。抗菌仕様のシート表皮、アシストグリップの追加など。
2024年2月：一部改良。パーキングサポートブレーキ（前後方静止物）を標準装備、ハイブリッドシンボルマークの変更。

グレード

グレードは標準グレードの「和（なごみ）」と上級グレードの「匠（たくみ）」の2種類があります。「深藍限定車（こいあいげんていしゃ）」は、両グレードに設定されます。

和（なごみ）

バンパー、バックドアガーニッシュ、アウトサイドドアハンドルなどが黒の樹脂パーツで無塗装。
フロントグリルはシルバー塗装と素地。
15インチスチールホイールにシルバーメタリック塗装の樹脂フルキャップ。
内装はイエローのアクセントが特徴。
ヘッドランプはハロゲンタイプ。

匠（たくみ）

バンパーはボディ同色塗装（フロント中央部はブラック塗装）。
フロントグリルはメッキとブラック塗装。
バックドアガーニッシュ、アウトサイドドアハンドルなどがメッキ。
15インチスチールホイールにスーパークロムメタリック塗装の樹脂フルキャップ。
内装はサテンメッキ加飾が施され、ピラーアッパーガーニッシュは植毛。
ヘッドランプはLEDタイプ。
リア左側サイドプロテクションモール、コンライト、リアシートヒーター、天井サーキュレーターなどの専用装備。

深藍限定車（こいあいげんていしゃ）

「匠」と「和」の両グレードに設定され、後席ドアに東京2020大会公式ロゴとトヨタのロゴのシールが貼付されます。東京都など一部の自治体では補助金の対象となっています。

JPN TAXI バン仕様車

「和」グレードをベースにした商用車で、後席を省いて積載性を高めたモデルです。乗車定員は2名、最大積載量は200kgの4ナンバー登録となります。

ボディカラー

ボディカラーは、深い藍色の「深藍（こいあい）」、黒色の「ブラック」、白色の「スーパーホワイトII」の3色が設定されています。顧客の要求に応じた塗装には対応していません。「深藍」のみ「深藍限定車」の設定がありました。一部の地域では、タクシー事業者が独自に全塗装して使用しているケースもあります。

メカニズム

チーフエンジニアは、小型ミニバン・シエンタのチーフエンジニアでもある粥川宏氏が担当しました。

ボディ・外装

シエンタのシャシーをベースに、低床・高天井スタイルを採用しています。助手席側のリアドアは電動スライド式で、車椅子での乗降を容易にしています。運転席側のリアドアはヒンジドアを採用しており、子供の飛び出しを防ぐ効果があります。室内には補助グリップが設置され、乗降時の負担を軽減しています。

内装

シートは全席に合成皮革を採用し、清掃性にも配慮しています。助手席側のグローブボックスを廃止し、乗車スペースを拡大しています。タクシーメーターやカーナビゲーションは、後席からも見やすいようにセンターパネルに配置されています。空調吹き出し口には、パナソニック製のナノイーが設置されています。シフトレバーはインパネシフトでストレート式を採用しています。

パワートレイン

「リダクション機構付THS II」をベースにしたLPGハイブリッドシステムを採用。1.5Lの「1NZ-FXP」型エンジンを搭載しています。ブレーキは後輪がドラムブレーキ、サスペンションはフロントがマクファーソンストラット式、リアがトレーリングリンク車軸式となっています。バッテリーは、駆動用にニッケル水素、補機用にEN規格のものが搭載されています。

LPGガスボンベの容量は52Lで、ハイブリッドシステムにより航続距離はほぼ据え置きになっています。JC08モード燃費は19.4km/L、WLTCモード燃費は16.8km/Lを達成しています。

安全性能

衝突回避支援パッケージ「Toyota Safety Sense」を標準装備。インテリジェントクリアランスソナー（パーキングサポートブレーキ）をオプション設定しています。2019年3月の一部改良で、昼間の歩行者検知機能が追加されました。

ユニバーサルデザイン

車椅子用のスロープを標準搭載していますが、設置作業に時間がかかることが指摘され、改良が加えられました。2020年1月にはスロープの耐荷重が200kgから300kgに変更されました。

前モデル（コンフォート系）との比較

CO2排出量と燃費が大幅に改善。
衝突被害軽減ブレーキを標準搭載。
リアシートにシートヒーターとサーキュレーターを装備（匠グレードのみ）。
運転席シートバックにUSB充電ポートを搭載。
ヘッドライトがLED化（匠グレードのみ）。
助手席側後ドアがスライドドアに変更。
燃料搭載量は減少している。
出力毎重量および重量毎出力値が悪化。
ブレーキフルードやタイヤ、バッテリーなどランニングコストが増加。
スペアタイヤがテンパータイヤに変更。
後席のフロアがフラット化。
最小回転半径が拡大。
ハザードスイッチの位置が変更。
室内容積が増加。
トランクがハッチバックに変更。
エンジンフードの支持がダンパーから支持棒に変更。
* 左後ドアの開閉操作が変更。

車椅子利用者からの改善要求

車椅子用のスロープの設置に時間がかかり、不便であるという声が多数寄せられました。特に、スロープの組み立て・分解に手間がかかり、乗降に時間がかかることが問題視されました。2019年3月の改良で、スロープの形状が変更され、作業時間が短縮されました。

ガソリンハイブリッド車との競合による売上の伸び悩み

ジャパンタクシーは当初月販1,000台を目標としていましたが、実際にはその1/3程度にとどまっています。理由として、価格の高さや福祉車両としての使いにくさ、LPGスタンドの減少などが挙げられます。一部のタクシー事業者は、ガソリンハイブリッド車のシエンタに乗り換えるケースが増えています。

タクシー業界団体からの耐久性改善要望

ジャパンタクシーは、走行距離が20万kmを超えると、ハイブリッドシステムのインバーター故障やスライドドアが開かないといった不具合が多発することが判明しています。全国ハイヤー・タクシー連合会は、トヨタ自動車に対し耐久性改善を求める要望書を提出しました。

日本国外における販売

香港では「TAXI」の名称で販売されています。タイでは「LPG HEV TAXI CONCEPT」として参考出品されました。

販売チャネル

トヨタ店、トヨペット店で販売されています。商用車扱いのため、一部地域では他の店舗での取り扱いがない場合があります。

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