トロント・メープルリーフス

トロント・メープルリーフス

トロント・メープルリーフスは、カナダのオンタリオ州トロントを活動拠点とするナショナルホッケーリーグ（NHL）所属のプロアイスホッケーチームです。NHL創設期から存在する「オリジナル・シックス」の一角を占め、北米でも最も歴史のあるチームの一つとして知られています。その長い歴史の中で、メープルリーフスは幾度となくスタンレーカップの栄光に輝き、カナダ国内はもとより世界中に熱狂的なファンを持っています。

チームの黎明期からスマイス時代へ

チームの歴史は、NHLが設立された1917年に始まります。前身となるトロント・ブルーシャツのオーナーであったリビングストン氏をリーグが排斥する形でNHLが発足した際、トロントにはアリーナズと呼ばれる新チームが誕生しました。アリーナズは初年度からスタンレーカップを獲得するという快挙を成し遂げました。1919年にはチーム名がセントパトリックスに変更され、1922年には再びスタンレーカップを制覇。この頃、特にベイブ・ダイはチームのスター選手として活躍しました。

チームが現在の「メープルリーフス」という名称になったのは1927年のことです。伝説的な人物、コーン・スマイスがチームを買収し、新たな時代が始まりました。5年間の低迷期を経て、1931年には新たなホームアリーナ、メープルリーフ・ガーデンズへの移転を果たします。この移転を機に、バシャール・ジャクソン、チャーリー・コナカー、ジョー・プリモーといった若手選手の活躍がチームを牽引し、トロントは3度目のスタンレーカップ優勝を飾りました。しかし、1933年にはスター選手のエース・ベイリーが試合中に受けた危険なプレイで選手生命を絶たれる悲劇も起こりました。その後もチームは7年間で5度決勝に進出するものの、優勝には手が届きませんでした。

伝説の逆転優勝と初の3連覇

メープルリーフスの歴史における最も劇的な瞬間の一つが、1942年のスタンレーカップ決勝でした。デトロイト・レッドウィングスを相手にまさかの3連敗を喫し、絶体絶命の状況に追い込まれます。しかしここからチームは驚異的な粘りを見せ、ドン・メッツ、ターク・ブロダ、スウィーニー・シュライナーらの活躍により、史上初のプレーオフでの3連敗からの逆転優勝を達成しました。これはメジャープロスポーツ史上でも類を見ない偉業です。1945年にもレッドウィングスを破って優勝。さらに1947年から1949年にかけては、NHL史上初となるスタンレーカップ3連覇の金字塔を打ち立てました。この成功は、ティーダー・ケネディをはじめとする当時の強力な選手層によって支えられていました。

黄金期、そしてバラード体制下の苦悩

1950年代に入ってもメープルリーフスは強豪であり続け、1951年にはライバルであるモントリオール・カナディアンズとの歴史的な決勝シリーズを制しました。このシリーズは全5試合が延長戦にもつれ込むという激戦となり、最終的にはディフェンスマンのビル・バリルコが決勝点を挙げ、チームを優勝に導きました。しかし、この栄光の立役者であるバリルコは、優勝からわずか3ヶ月後に飛行機事故で非業の死を遂げました。チームはその後しばらく優勝から遠ざかりますが、1960年代には再び黄金期を迎え、1962年から1964年にかけて2度目の3連覇を達成。フランク・マホブリッヒ、デイブ・キーオン、ボブ・プルフォード、ティム・ホートンといったスター選手が躍動しました。1967年にはカナダ建国100周年の年に、カナディアンズとの決勝を制して優勝を果たしました。しかし、1962年にチームオーナーとなったハロルド・バラードの経営体制下では、その後のチームは低迷期を迎えることになります。

1980-90年代の変遷と光明

1970年代は一時的な好調期はあったものの、オリジナル・シックス時代の支配力は失われました。ダリル・シトラーやビョルエ・サルミングといった名選手が在籍しましたが、大きな成功には繋がりませんでした。特に1980年代は、バラードによる独裁的な経営の影響もあり、チーム史上最低勝率を記録するなど深刻な低迷期に突入しました。しかし、この苦しい時代にもリック・ヴァイヴのようなチームの顔となる選手が登場しました。

バラードの死後、1990年代に入るとチームに光明が差し込み始めます。1993年にはダグ・ギルモア、デイブ・アンドレチャク、フェリックス・ポトバンといった新戦力の活躍もあり、チームは大きく躍進。レギュラーシーズンで当時のフランチャイズ記録となる勝ち点を獲得し、プレーオフでもカンファレンス決勝まで駒を進めました。カナディアンズとのカナダチーム同士の決勝が期待されましたが、惜しくもロサンゼルス・キングスに敗退しました。1999年には長年親しまれたメープルリーフ・ガーデンから新アリーナ、エアカナダ・センター（現スコシアバンク・アリーナ）へ本拠地を移転。マッツ・サンディンを中心に、セルゲイ・ベレジン、カーティス・ジョセフらが活躍し、再びカンファレンス決勝に進出するなど、チームは新たな活気を取り戻しました。

2000年代以降、そしてマシューズの時代

2000年代に入ってもチームはプレーオフで健闘を見せましたが、カンファレンス決勝で敗れるなど、あと一歩のところでスタンレーカップには手が届きませんでした。カーティス・ジョセフの移籍後、エド・ベルフォアらがゴールを守りましたが、成績は安定しませんでした。長い間プレーオフ進出から遠ざかる時期が続きますが、2016年に全体1位指名で入団したオーストン・マシューズがチームに新たな希望をもたらします。マシューズは1年目にチームにとって51年ぶりとなる新人王（カルダー記念賞）を獲得すると、2021-22シーズンには67年ぶりとなるシーズン最優秀選手（ハート記念賞）に輝き、チームの中心選手として活躍しています。

人気と永久欠番

メープルリーフスはNHLの中でも最も熱狂的で大規模なファン層を持つチームの一つですが、一方で特定の層からは敬遠される存在とも言われています。カナダ国内の主要都市には必ずと言っていいほどメープルリーフスのファンが存在するため、アウェイゲームでも熱気あふれる応援が見られます。

チームの歴史に名を刻んだ偉大な選手たちの栄誉を称える永久欠番制度も存在します。かつてはエース・ベイリーの「6」とビル・バリルコの「5」のみが永久欠番とされていましたが、2016年の球団創立100周年を機に、デイブ・キーオンの「14」を含む名誉番号となっていた多くの番号が一斉に永久欠番へと格上げされました。これは、チームの伝統と、それを築き上げた選手たちへの敬意を示すものです。

数多くの栄光と苦難の歴史を持つトロント・メープルリーフスは、これからもNHLの中心チームとして、その歴史を紡ぎ続けていくでしょう。

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