オリジナル・シックス

「オリジナル・シックス」（Original Six）とは、北米のプロアイスホッケーリーグであるNHL（ナショナルホッケーリーグ）において、1942-1943シーズンから1967年のリーグ拡張までの25シーズンにわたり、リーグを構成していた6つのチームを指す歴史的な通称です。

構成チーム

オリジナル・シックスと呼ばれるチームは以下の通りです。

モントリオール・カナディアンズ
トロント・メープルリーフス
ボストン・ブルーインズ
デトロイト・レッドウィングス
シカゴ・ブラックホークス
ニューヨーク・レンジャース

これらのチームは現在もNHLに所属しており、大きな本拠地の移転や名称変更（シカゴ・ブラックホークスは1986年にBlack HawksからBlackhawksへ変更）はありません。

用語の正確性について

「オリジナル・シックス」という呼称は広く用いられていますが、厳密には正確とは言えません。NHLが創設された1917年当時のメンバーは、現在のオリジナル・シックスに含まれるチームのうち、モントリオール・カナディアンズとトロント・メープルリーフスのみでした。その後、ボストン・ブルーインズが最初のアメリカ合衆国のフランチャイズとして1924年に加盟し、さらにモントリオール・マルーンズ、ニューヨーク・アメリカンズ、ピッツバーグ・パイレーツなど、多くのチームがリーグに加わりました。1926年には、後のオリジナル・シックスとなるチームがすべて揃い、一時期はリーグは最大10チームで構成されていました。しかし、1929年の世界恐慌とその後の影響により、マルーンズ、アメリカンズ、そして初期メンバーであったオタワ・セネターズ（初代）といったチームが財政難から次々と消滅しました。結果として、残った6チームが1942-43シーズン以降、唯一のNHL構成チームとして活動を続けることになったのです。

6チーム時代の特徴と利点

リーグがこの6チーム体制に縮小したことは、いくつかの特徴を生み出しました。選手層が限られたことで、リーグ全体のプレーレベルが相対的に高まったと言われています。また、シーズン中に同じチームと対戦する機会が多く（最大14回）、ファンにとってリーグに所属する選手たちがより身近な存在となり、選手への親近感が増しました。試合の観客動員率も非常に高く、アリーナの収容能力の95%が埋まることも珍しくありませんでした。

時代に対する批判

一方で、オリジナル・シックス時代には様々な批判も存在しました。

プレーオフ進出の容易さ

当時のレギュラーシーズン後、6チーム中4チームがプレーオフに進出できたため、敗退するのはわずか2チームでした。これにより、プレーオフ進出自体があまりに容易であるという指摘がありました。特に、モントリオール・カナディアンズは1949年から1967年までの期間、一度もプレーオフ進出を逃していません。デトロイトとトロントも同様に欠場が少なく、事実上、これら上位3チームが有利な状況を享受し、残りの3チームが最後の1枠を争う構図が固定化されがちでした。

オーナーによる支配と独占

この時代のリーグ運営は、各チームのオーナーによって独裁的かつ独占的に行われていたという批判があります。顕著な例として、デトロイト・レッドウィングスのオーナーであったジェームス・E・ノリスが挙げられます。ノリスはレッドウィングスだけでなく、シカゴ・ブラックホークスに対しても実質的な支配権を持ち、さらにニューヨーク・レンジャースの筆頭株主でもありました。また、世界恐慌の際にボストン・ブルーインズの借金返済を猶予することで、同チームへの影響力も維持しました。後に選手会設立を訴えたテッド・リンジーが、ノリスの影響下にあった最下位のシカゴへ放出されたことは、オーナー権力の象徴的な出来事として語られています。

リーグ拡張の停滞

第二次世界大戦後、アイスホッケーへの関心が高まり、リーグ拡張の可能性が議論されるようになりますが、当時の6チームのオーナーはこれを一貫して拒否し続けました。新たなフランチャイズ設立の申し出があるたびに基準を変更したり、かつてリーグに所属していたマルーンズやアメリカンズの再加盟に関する約束を反故にしたりしたとされています。

選手層の課題

また、1980年代に選手のキャリアが長くなる傾向が見られるまで、選手の新陳代謝が比較的少なく、特に1950年代から1960年代にかけてカルダー記念賞（最優秀新人選手賞）を受賞した選手のレベルが、他の時代と比べて総じて低いとする見解もあります。

時代の終焉と現代への影響

1960年代に入ると、NHLが拡大しない限り、他のプロホッケーリーグ（特に太平洋岸の市場を対象としたウェスタン・ホッケー・リーグ：WHL）がその空白を埋めていくことは明らかになってきました。WHLは、当時のNHLの限られた枠から締め出された才能ある選手たちの活躍の場となり、成功を収めていました。このような状況に加え、アメリカのテレビ局との大型放映権契約の可能性が浮上したことが、ついに6チームのオーナーたちの背中を押し、リーグ拡張（エクスパンション）へとつながりました。これが1967年のエクスパンション・シックスと呼ばれる出来事で、NHLに新たに6チームが加わり、オリジナル・シックス時代は幕を閉じました。

オリジナル・シックス時代が1942年から始まったとされる一方、1959-60シーズンまでは、すべての選手がキャリア全体をこれら6チームだけで過ごしたわけではありませんでした。最後にオリジナル・シックス以外のチーム（ブルックリン・アメリカンズ）でのプレー経験があったケン・モスデルは1959年に引退しました。また、オリジナル・シックス時代にNHLでプレーした最後の選手は、ボストン・ブルーインズのウェイン・キャッシュマンで1983年に、最後のゴーリー（ゴールテンダー）は同じくボストンのロガシアン・ヴァションで1982年にそれぞれ現役を退いています。

これらのチームとその時代は、NHLの長い歴史において重要な一章を形成しており、現在もリーグの主要チームとして活動を続けています。

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