ドゥルミトル

ドゥルミトル山：眠れる山の自然と課題

ドゥルミトル山は、ディナル・アルプス山脈の延長に位置する山岳地帯です。最高峰のボボトヴ・ククは標高2528mを誇ります。ドゥルミトルという名前は、ルーマニア語で「眠るもの」を意味し、古代ローマ人がその穏やかな景観を評して名付けたと言われています。

ドゥルミトル国立公園

1952年に設定されたドゥルミトル国立公園は、1980年にユネスコの世界遺産に登録されました。公園内には、氷河によって形成された起伏に富んだ地形が広がり、ヨーロッパクロマツなどの森林が鬱蒼と茂っています。固有種の植物相や昆虫の多様性も特筆すべき点です。

多様な動植物

ドゥルミトル国立公園には、ヨーロッパオオライチョウ、クロライチョウ、ヒグマ、シャモア、オオカミ、ヤマネコ、ユーラシアカワウソなど、多様な動物が生息しています。また、イヌワシ、ボネリークマタカ、ヒメクマタカ、シロエリハゲワシ、ハヤブサ、ワシミミズク、チュウヒワシ、ヨーロッパハチクマなど、多種多様な猛禽類も観察できます。水域には、希少なドナウイトウも生息しています。

タラ渓谷

国立公園の面積は約300平方キロメートルで、ドルミトル山塊やヨーロッパ最深のタラ渓谷（深さ1900m）も含まれています。タラ川も保護対象となっており、その景観は圧巻です。

環境問題と課題

しかし、ドゥルミトル国立公園はその美しさとは裏腹に、いくつかの環境問題を抱えています。公園近くのジャブリャク市や人間の活動による環境への影響、モンテネグロ独立後の観光客増加などが、動植物相にとって懸念材料となっています。

森林伐採

2002年には、70平方キロメートル近くが人間の活動拡大許可区域から除外されましたが、依然として公園の完全性を脅かす活動が見られます。特に深刻なのが、森林伐採です。「衛生上の間伐」という名目で、大量の木材が伐採され、近くの製材所に運ばれています。

バルカンの山村

公園内にはいくつかの村が点在しており、その中にはバルカン半島最高地点に位置するマラ・ツルナ・ゴーラ村もあります。この村は、バルカン半島の典型的な山村で、牛や羊の牧畜を中心とした山岳民の生活が維持されています。住民は自然と調和した生活を送ってきました。

密猟

ドゥルミトル国立公園は、特に密猟によって脅かされている動物たちのために、より一貫した保護対策が必要です。ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争後、自動小銃を所持した密猟者が流入し、状況は悪化しました。1994年には4000頭いたシャモアが、2005年には600頭にまで減少しました。

世界遺産登録

ドゥルミトル国立公園は、1980年に世界遺産に登録されました。当初の登録面積は32000ヘクタールでしたが、2005年に34000ヘクタールに拡大されました。

登録基準

この世界遺産は、以下の登録基準を満たしています。

(7): ひときわすぐれた自然美及び美的な重要性をもつ最高の自然現象または地域を含むもの。
(8): 地球の歴史上の主要な段階を示す顕著な見本であるもの。
* (10): 生物多様性の本来的保全にとって、もっとも重要かつ意義深い自然生息地を含んでいるもの。

ドゥルミトル国立公園は、その自然の美しさと生態系の豊かさから、世界遺産としての価値が認められています。しかし、環境問題や密猟などの課題を克服し、持続可能な形で保護していく必要があります。

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