ナギ
ナギ（梛）とは
ナギ（学名：Nageia nagi）は、マキ科ナギ属に分類される常緑高木です。かつてはマキ属に分類されていましたが、葉の形態や分子系統学的研究により別属とされました。針葉樹の仲間でありながら、幅広く被子植物のような葉を持つのが特徴です。種子は、鱗片が発達した套皮に包まれ、核果のような形状になります。
特徴
- - 樹形: 高さ25m、幹の直径1.5mにもなる常緑高木です。葉が密生し、円形の樹冠を形成します。
- - 樹皮: 平滑で黒褐色から灰褐色、または紫褐色で、鱗片状に浅く剥がれ、その跡は紅黄色になります。
- - 枝: 半円柱状で、小枝は対生し、硬く無毛で扁平です。
- - 葉: 十字対生しますが、葉柄がねじれているため二列対生のように見えます。葉身は卵形から長楕円状披針形で、全縁、厚く革質で光沢があります。中央脈はありませんが、基部で二又分枝し先端で収束する平行脈が多数あります。葉は縦には裂けやすいですが、横には切れにくいという特徴があります。
- - 花: 雌雄異株で、花期は3〜6月です。雄花は円柱状で、前年枝の葉腋に束生します。雌花は前年枝の葉腋に単生し、倒生胚珠を1つ持ちます。
- - 種子: 球形で直径10〜15mm、最初は緑色ですが、熟すと紫褐色になります。種子は肉質の套皮に包まれています。
- - 根: 根に根粒状の構造を持ちますが、窒素固定能は確認されていません。
分布と生態
本州南部から台湾、中国南部にかけての暖帯から亜熱帯域に分布します。日本では神社によく植栽されており、特に熊野権現との関わりが深いです。葉、種子、根などにアレロパシー物質であるナギラクトンを含み、他の植物の成長を抑制します。常緑広[[葉樹林]]に生育します。
保全状況
国際自然保護連合（IUCN）のレッドリストでは、近危急種（NT）に指定されています。日本では、国の天然記念物に指定されている場所も多く、地域によっては保護の対象となっています。
人間との関わり
文化
日本では古くから神社に植栽され、神木として崇められてきました。特に熊野権現との関わりが深く、熊野神社ではナギを玉串として用いたり、供物をナギの葉の上に載せたりします。また、ナギの葉は、男女間の縁が切れないように、夫婦円満や縁結びのお守りとしても用いられてきました。その名が「凪」に通じることから、船のお守りとしても使われてきました。
利用
世界各地で庭園、並木、生け垣などに植栽されています。材は硬く耐水性があり、建築、橋、家具などに利用されます。樹皮にはタンニンが含まれており、皮なめしや染料として使われます。また、精油はアロマテラピーにも利用されています。生薬としても用いられ、根や樹皮は筋肉痛や関節痛に、葉は止血に効果があるとされています。種子からは油が採れ、食用や灯火用に使われたこともあります。
名称
「ナギ」という名前は、葉の形がコナギ（古名はナギ）に似ていることに由来すると言われています。また、葉が横に切れにくいことから「チカラシバ」などとも呼ばれます。
その他
ナギは、その独特な姿と多様な利用価値から、人々の生活や文化に深く関わってきた植物です。現在でも、神社や庭園などでその姿を見ることができ、人々に安らぎと癒しを与えてくれます。
関連項目
外部リンク
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