ナショナル航空193便着水事故

ナショナル航空193便着水事故

1978年5月8日、アメリカ合衆国フロリダ州ペンサコーラで発生した航空事故です。ナショナル航空193便（ボーイング727-235型機）は、マイアミからペンサコーラ地域空港へ向かう途中、着陸進入中に空港手前のエスカンビア湾に着水しました。この事故により、乗員乗客58名のうち3名が死亡しました。

事故の経緯

事故当時、ペンサコーラ地域空港の滑走路16の計器着陸装置（ILS）は工事のため使用停止中でした。代わりに滑走路25への非精密進入が利用可能でした。193便が進入を開始する前、管制から先行機が雲底を抜けたとの情報がありましたが、その高度が規定を下回っていたため、193便の副操縦士は懸念を表明しました。また、先行していたイースタン航空便が雲で滑走路を見失い着陸復行したという情報も入っていました。

進入開始後、副操縦士は高度の読み上げと進入状況の口頭確認を怠りました。対地接近警報（GPWS）が作動した際、機長は高度計を誤読し、警報は降下率が高いせいだと判断しました。しかし、実際には機体の高度は著しく低く、危険な状態でした。また、航空機関士が警報を一時的に切ってしまったことも、事態を悪化させる要因となりました。その後、警報が再作動することはなく、乗員は最低降下高度を下回ったことに気づかないまま、着水に至りました。

事故原因

連邦航空局（FAA）は当時、視界は十分だったと発表しましたが、事故の要因としてパイロットの準備不足が指摘されました。機長と副操縦士は、滑走路16が閉鎖されていることを認識していながらも、それを失念していました。また、滑走路25で利用可能だったVASIS（進入角指示灯）の情報も把握していませんでした。さらに、管制官による不適切な誘導も事故の一因となりました。管制官は、最終進入を始めるにはあまりにも近い地点で193便に針路を指示し、パイロットに十分な準備時間を与えませんでした。パイロットは進入中に過度に忙しくなり、高度と降下率の誤認を招きました。

事故後、機長、副操縦士、航空機関士は解雇されました。彼らはNTSB（国家運輸安全委員会）の調査に対し、高度計の読み間違いを認めています。

避難の問題点

193便には救命いかだが搭載されておらず、座席のクッションも浮具として機能しませんでした。多くの乗客はクッションが浮くものだと誤解して使用を試みましたが、実際には浮きませんでした。また、モビール・ダウンタウンからペンサコーラへのフライトは洋上飛行ではなかったため、出発時に救命胴衣の場所や使用方法に関する説明も行われなかったため、多くの乗客は救命胴衣の場所も使い方を知りませんでした。このため、乗客は避難に苦労しました。

まとめ

ナショナル航空193便着水事故は、パイロットのミス、管制の不手際、安全装備の不足が重なり発生した悲劇でした。この事故は、航空安全における複数の問題点を浮き彫りにし、その後の航空事故調査や安全対策に大きな影響を与えました。

参考資料

• - NTSB (1981年). “AIRCRAFT ACCIDENT REPORT: BOEING 727-235, N4744 : NATIONAL AIRLINES, INC. : ESCAMBIA BAY : PENSACOLA, FLORIDA : MAY 8, 1978 : REVISIONS ADOPTED : APRIL 10, 1981” (PDF). National Transportation Safety Board. 2018年3月13日閲覧。

関連項目

• - 日本航空サンフランシスコ湾着水事故

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