ナンヨウマンタ

ナンヨウマンタ (Mobula alfredi)

ナンヨウマンタは、トビエイ目イトマキエイ科に属する軟骨魚類です。かつてはオニイトマキエイと混同されていましたが、研究が進み、別種として認識されるようになりました。

分類

ナンヨウマンタは1868年に、オーストラリア博物館の館長であるGerard Krefftによって初めて記載されました。種小名の alfredi は、最初にオーストラリアを訪問した英国王室のメンバー、アルフレッド・アーネスト・アルバートに敬意を表して名付けられました。

2009年、オニイトマキエイとして知られていた種が、実際には2つの異なる種に分類できるという研究論文が発表されました。これにより、それぞれに Manta birostris と Manta alfredi の学名が与えられました。

日本の水族館での調査の結果、飼育されていたのは Manta birostris ではなく、Manta alfredi であることが判明し、和名として「ナンヨウマンタ」が採用されました。

2017年には、ミトコンドリアDNAの分析に基づき、ナンヨウマンタを含むオニイトマキエイ属がイトマキエイ属に再分類され、学名が Mobula alfredi に変更されました。

分布

ナンヨウマンタは、インド洋（紅海、南アフリカ）や太平洋（タイから西オーストラリア、八重山諸島、ニューサウスウェールズ州、フランス領ポリネシア、ハワイ諸島など）の熱帯・亜熱帯海域に広く分布しています。サンゴ礁周辺を好んで生息しています。

形態

体盤幅は最大で5.5メートルに達し、平均的なサイズは3〜3.5メートルです。これは、一般的に知られているエイの種の中では、オニイトマキエイに次いで2番目に大きいものです。

体は平たく、大きな三角形の胸鰭を持ちます。頭部には一対の頭鰭があり、遊泳時には巻き上げていますが、摂餌時には広げて水流を口に送り込みます。眼と鼻孔は頭鰭の後方にあり、5対の鰓裂は腹側に位置しています。背鰭は小さく、尾鰭は鞭状です。

体色は背面が黒または濃い藍色で、頭頂部に白い模様があります。この白い模様は個体識別に役立ちます。口の周辺は白く、体盤の表面には溝状の構造が見られます。歯は細長く、密集していません。

生態

ナンヨウマンタは濾過摂食を行い、プランクトンを海水と一緒に吸い込み、濾し取って食べます。宙返りのような旋回行動や、集団で円を描くように食事をする様子も観察されています。餌を求めて水深672メートルまで潜ることもあります。

体の汚れや寄生虫を落とすために、ホンソメワケベラなどの小魚にクリーニングしてもらうことがあります。また、求愛行動として、オスがメスを追いかけ回す様子も見られます。鰭には噛み跡があるメス個体も多く確認されています。

卵胎生で、妊娠期間は約12ヶ月です。仔魚は子宮内で未受精卵や子宮ミルクを栄養源として成長し、一度に1〜2尾の仔魚を産みます。生まれたばかりの仔魚は体盤幅が1メートルを超えます。成熟には10年前後かかり、寿命は40年前後とされています。

体が大きく遊泳速度も速いため、天敵は限られています。イタチザメ、ヒラシュモクザメ、オオメジロザメ、オキゴンドウ、シャチなどがナンヨウマンタを捕食することがあります。

脳化指数が高く、脳の質量と体重の比率は魚類の中で最大級です。研究により、ナンヨウマンタは相互関係のある個体同士で友情を築き、集団を形成することが明らかになっています。ダイバーに助けを求める行動も報告されており、知能の高さが伺えます。

人との関わり

ナンヨウマンタは、食用や皮革、漢方薬の材料として利用されることがあります。しかし、漁獲や混獲、沿岸開発、海洋汚染、気候変動などにより、生息数は減少しています。

ワシントン条約附属書IIに掲載されており、国際的な保護の対象となっています。繁殖率が低いため、個体数の回復は難しく、保護対策が急務となっています。

大型水槽での飼育も行われており、沖縄美ら海水族館やアクアパーク品川などで見ることができます。過去には海遊館や大分マリーンパレス水族館でも飼育されていました。

性格はおとなしく、好奇心旺盛で人懐っこいため、ダイバーに人気があります。

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