ニガキ

ニガキ（苦木）とは

ニガキ（学名: Picrasma quassioides）は、ニガキ科ニガキ属に分類される落葉性の高木です。日本を含む東アジアの温帯から熱帯地域に広く分布し、山野に自生しています。雌雄異株であり、樹皮、材、枝、葉など、植物全体に強い苦味があることが特徴です。この苦味は薬効成分として利用され、ニガキの名前の由来にもなっています。中国では「苦樹」と呼ばれています。

分布と生育環境

ニガキは、日本では北海道の一部地域から本州、四国、九州にかけて分布しており、山林や丘陵地などで見られます。海外では、台湾、朝鮮半島、中国（河北省から雲南省にかけて）、ヒマラヤ地域に分布しています。一般的にニガキは群生することは少なく、他の樹木に混ざってまばらに生息しています。

形態・生態

ニガキは落葉広葉樹であり、樹高は10～15メートルに成長します。樹皮は暗灰褐色で滑らかですが、老木になると縦に裂け目ができます。一年枝は太めで褐色をしており、大きな白い皮目が目立ちます。葉は互生し、奇数羽状複葉で、長さは15～45センチ[[メートル]]になります。小葉は9～15枚が対生し、卵状長楕円形で先端が尖っています。花期は4～6月で、葉の付け根から集散花序を出し、小さな黄緑色の花を多数咲かせます。雌雄異株であり、雄花序には30～50個、雌花序には7～10数個の花がつきます。果実は9月頃に成熟し、直径6～7ミリ[[メートル]]の円形の核果で、はじめは黄色ですが、後に緑黒色に変化します。
冬芽は裸芽で、褐色の毛に覆われた幼い葉が丸まっています。枝先には頂芽がつき、側芽は互生します。葉痕は半円形や楕円形で、維管束痕が5～7個あります。葉、花、果実の様子はミカン科のキハダに似ていますが、キハダは樹皮の内皮が鮮やかな黄色であるため、区別は容易です。

利用

庭園樹

ニガキは、樹形が優美で秋の黄葉も美しいことから、庭園樹として利用されることがあります。アメリカではよく見られますが、日本では京都の寺院の庭園などで使われている例があります。また、刈り込んで生け垣にすることもでき、虫がつきにくく、剪定によって葉を小さく保つことができます。

生薬

ニガキの樹皮と材に含まれる苦味成分は、生薬として利用されます。乾燥させた樹皮は「苦木（くぼく）」と呼ばれ、日本薬局方に収録されています。苦木にはクァシンなどの苦味成分が含まれ、抗菌作用や殺虫作用があると言われています。主に健胃薬、整腸薬、解熱剤として用いられ、太田胃散などの薬にも配合されています。ただし、伝統的な漢方薬としてはあまり使用されません。

殺虫剤

乾燥させた木材や葉を煮出して作った煎剤は、殺虫剤として利用できます。農作物や家畜に散布して、害虫駆除に用いられます。効果は農薬に劣るものの、天然の殺虫成分であるため、有機農法などで使用されることがあります。かつては、ケジラミの除去にも用いられ、煎じた汁で衣類を洗うとコロモジラミがつかないと言われていました。

木材

ニガキの心材は黄色みを帯びており、木目がはっきりとしています。軽量で丈夫なため、箱根寄木細工などの工芸品の材料として使われます。しかし、食器にすると苦味成分が溶け出してしまうため、利用範囲は限られています。

アイヌ文化との関係

北海道のアイヌ語では、ニガキは「鹿を殺す木」という意味で呼ばれることがあります。この名称の由来については諸説ありますが、一説には鹿も食べないほど苦いことから、ニガキが生えている場所に鹿を追い込むと捕獲しやすいという説があります。

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