ニコラ・サーラ

ニコラ・サーラ（Nicola Sala, 1713-1801）は、18世紀のイタリアで活躍した作曲家であり、高名な音楽理論家でした。ナポリ楽派の中心人物の一人として、後進の育成にも多大な貢献をしました。

サーラは1713年4月7日にトッコ・カウディオで生を受けました。若い頃からナポリの音楽教育機関で学び、特にピエタ・デイ・トゥルキーニ音楽院にて、当時の著名な作曲家であるニコラ・ファーゴやレオナルド・レーオに師事し、1732年から1740年まで研鑽を積みました。

作曲家としてのキャリアは、1737年にローマで初演されたオペラ・セリア《ヴォロゲーゾ（Vologeso）》が最初の重要な作品と考えられています。師レオの没後、1745年にはナポリ王室礼拝堂の楽長職を引き継ぎました。彼のオペラ作品はナポリのサン・カルロ劇場などで上演され、特にピエトロ・メタスタージオの台本による《ゼノビア（La Zenobia）》（1761年）は高い評価を受けました。オペラ以外にも、オラトリオ、ミサ曲、カンタータなど、多様なジャンルの楽曲を手がけました。

サーラの功績は作曲活動にとどまりません。彼はナポリの音楽教育において極めて重要な役割を果たしました。母校であるピエタ・デイ・トゥルキーニ音楽院で実に47年間にもわたり教鞭を執り、将来の音楽家たちを育てました。1787年には副学長に就任し、さらに1793年から1799年まで学長を務めました。彼の指導のもとからは、フェルディナンド・オルランディやアンブロジオ・ミノーヤといった多くの優れた作曲家が巣立ちました。

彼はまた、音楽理論家としても重要な足跡を残しました。特に、対位法に関する学術論文をいくつか著しており、1794年にナポリで出版された大著《Regole del contrappunto pratico（実践対位法の規則）》は、当時のナポリ楽派の理論的基盤を示すものとして現在も価値が認められています。この他にも、《Principi di contrappunto（対位法の原理）》や鍵盤楽器の演奏法に関する《Elementi per ben suonare il cembalo》など、複数の理論書や教育的な著作を残しました。教育・研究活動の傍ら、サーラは良質な音楽出版譜の収集にも熱心に取り組みました。

サーラは1801年8月31日にナポリでその生涯を閉じました。

長らくその作品の多くは忘れられていましたが、近年になって、彼の楽曲や理論書がベネヴェントの音楽院などで再発見され、研究が進んでいます。ナポリ、ローマ、パリといった各地の大学の研究者たちが協力し、古文書解読やラテン語の専門知識を駆使して楽譜の復元や研究を行い、毎年サーラのオペラやオラトリオが現代で再び上演される機会が生まれています。これにより、ナポリ楽派における彼の貢献が改めて認識されつつあります。

ニコラ・サーラは、作曲家、教育者、理論家という三つの側面から、18世紀ナポリの音楽文化の発展に深く寄与した人物です。彼の残した楽曲や理論書は、当時の音楽実践を知る上で貴重な資料となっています。

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