ニューなのはな

JR東日本が保有していた「ニューなのはな」は、1997年から2016年にかけて活躍した、交流・直流両用に対応した電車形式のジョイフルトレインです。

この車両は、JR東日本千葉支社で長年運用されていたお座敷電車「なのはな」の老朽化と、直流専用であることによる運用範囲の制約を解消するため、その代替として開発されました。単なる代替だけでなく、サービスレベルの向上を図ることも大きな目的でした。

車両は、国鉄時代に製造された485系特急形電車からの改造によって誕生しました。製造は東急車輌製造が担当しましたが、名義上は郡山工場（現・郡山総合車両センター）の施工とされています。6両編成で、先頭車はクロ484形とクロ485形、中間車はモロ484形とモロ485形という形式が付与され、同系列の他のジョイフルトレインの続き番号となりました。形式上はグリーン車ですが、座席配置での運用時には普通車として扱われました。
車体は、同じ485系改造の「華」に似た、丸みを帯びたデザインで新造されています。走行機器は種車である485系から流用されました。車体断面は「華」とほぼ同じ車両限界に合わせられ、パンタグラフ部分の屋根を低くする改造で、中央東線のような狭小トンネル区間への入線も可能でした。落成が信越本線横川 - 軽井沢間（碓氷峠）廃止後であったため、同区間通過に必要な「横軽対策」は施されていません。方向幕は車体側面に設置されました。正面は「華」と同様の曲面ガラス1枚構造ですが、乗務員室直後に出入台（デッキ）が設けられ、展望サロンはありませんでした。外観塗装は、上部が緑系、下部が青系、境界に白い帯、正面窓周りは黄色という配色でした。

この車両の最大の特色は、客室を座席仕様とお座敷仕様に容易に変換できる座席構造にありました。
座席仕様では固定式のクロスシート（ボックスシート）として使用します。お座敷にする際は、クロスシートの背もたれを倒すことで畳敷きの床面が現れます。中央通路部分は、専用のテーブルを設置することで、深さ380mmの掘り炬燵として利用できました。荷物棚は座席使用時の高さに合わせて設置され、お座敷利用時は折りたたみ可能でした。
全車両に通信カラオケと冷蔵庫が設置されており、いずれの仕様でも利用できました。
編成中の2号車と4号車は、パンタグラフ設置に伴う低屋根構造のため、お座敷には適していませんでした。そのため、2号車は固定クロスシート16席と多目的室、4号車はミーティングルームとして区別されていました。
その他、1・3・6号車には循環式洋式トイレ、洗面所、自動販売機が、4号車にはテレホンカード式公衆電話が設置されていました。

「ニューなのはな」は1997年12月に試運転を行い、幕張車両センターに配置されました。1998年2月からは交流電化区間への乗り入れを開始しました。主に団体専用列車や臨時列車として運用され、2008年から2010年にかけては両国 - 成東間の臨時快速「お座敷東金号」にも使用されました。客室の柔軟性を活かし、車両単位や同じ車両内で座席・お座敷を使い分けた運用も行われました。

車両の老朽化により、本車両は引退を迎えることとなりました。2016年8月21日に、定期的に充当されていた臨時列車「リゾートあわトレイン」での運用を終了。同年8月27日・28日には、団体臨時列車「ありがとうニューなのはな 北総・南房総乗りつくしの旅」で最後の臨時運用を行いました。そして、同年9月25日に長野総合車両センターへの廃車回送を兼ねたさよなら運転を実施し、翌26日付で廃車されました。直接の後継車両は登場しませんでしたが、元209系電車を改造した「BOSO BICYCLE BASE」が後継的な役割を担っています。

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