ニュージーランド国民党

ニュージーランド国民党：歴史、政策、そして変遷

ニュージーランド国民党（New Zealand National Party）は、ニュージーランドの中道右派政党として、同国の労働党と並ぶ二大政党の一つです。国際民主同盟にも加盟しており、親米政策を明確に打ち出しています。

党のイデオロギーと政策

国民党は、自由経済主義と市場経済主義を重視する一方、福祉政策には消極的な姿勢を示してきました。かつては保守主義、そして事実上の人種差別とみなされる白人主義的な政策も採っていました。マオリ系住民への保護政策にも消極的で、非白人移民の制限を政策目標とするなど、人種差別的な側面を持っていました。

しかし、2008年にジョン・キー政権が発足すると、状況は変化を見せます。「マオリの権利擁護政策を訴える」マオリの党から閣僚を指名（閣外協力）するなど、先住民政策への取り組みを強化しました。しかし、2023年に発足したクリストファー・ラクソン政権では、ACT党との連立により、マオリに対する支援策の見直しが行われています。

安全保障政策においては、太平洋安全保障条約（ANZUS）の事実上の復活に積極的な姿勢を示しており、アメリカとの関係を重視しています。核エネルギー利用には肯定的ですが、核兵器の保有に関しては明確な立場を示していません。これは反核を主張するニュージーランド労働党や緑の党とは対照的です。

歴史と軌跡

国民党は、1936年に改革党と統一党が合併して誕生しました。世界恐慌後の1935年の選挙で保守政権が労働党に敗北したことを受け、保守勢力の合同が実現したのです。以来、1949年～1957年、1960年～1972年、1975年～1984年の3度にわたり政権を担ってきました。

第二次世界大戦後は一貫して親米政策を採り、オーストラリア、アメリカと共にANZUS条約を締結、エシュロンにも参加しました。経済分野ではアメリカやオーストラリアからの資本導入を促進し、産業振興を図ってきました。酪農品の輸出では日本市場を重視する一方、オーストラリアとは経済緊密化協定を結び、両国経済の一体化を目指しました。しかし、世界的な不況とインフレの影響を受け、1984年の選挙でロンギ労働党政権に敗北を喫しました。

南アフリカのアパルトヘイト問題をめぐるラグビー代表チームのニュージーランド遠征問題では、国民党はスポーツへの政治介入阻止を訴え、南ア代表チームの入国を許可する立場をとり、勝利を収めました。しかし、この決定は、モントリオール五輪のアフリカ諸国によるボイコットという国際的な反発を招きました。マルドゥーン政権は南アへの遠征も実施しましたが、国内では反体制運動も活発化し、試合会場にデモ隊が乱入する事態も発生しました。

2008年の総選挙で国民党は政権を奪還、ジョン・キー率いる国民党政権は、2011年、2014年の総選挙でも勝利し、3期に渡り政権を維持しました。しかし、2017年の総選挙では過半数を獲得できず、労働党が政権を握ることになります。2020年の総選挙では35議席と歴史的な敗北を経験し、野党に転落しました。

歴代党首

国民党には多くの党首が在籍してきました。その中には、ニュージーランドの歴史に大きな足跡を残した人物も含まれています。以下に歴代党首を列挙します。

1. アダム・ハミルトン (1936年-1940年)
2. シドニー・ホランド (1940年-1957年)
3. キース・ホリヨーク (1957年-1972年)
4. ジャック・マーシャル (1972年-1974年)
5. ロバート・マルドゥーン (1974年-1984年)
6. ジム・マックレイ (1984年-1986年)
7. ジム・ボルジャー (1986年-1997年)
8. ジェニー・シップリー (1997年-2001年)
9. ビル・イングリッシュ (2001年-2003年, 2016年-2018年)
10. ドン・ブラッシュ (2003年-2006年)
11. ジョン・キー (2006年-2016年)
12. サイモン・ブリッジス (2018年-2020年)
13. トッド・マラー (2020年)
14. ジュディス・コリンズ (2020年-2021年)
15. クリストファー・ラクソン (2021年- )

これらの党首は、それぞれの時代において、国民党を率いて政策を推進し、ニュージーランドの政治に大きな影響を与えてきました。

まとめ

ニュージーランド国民党は、歴史的背景や国際情勢の変化の中で、その政策やイデオロギーを調整しながら、ニュージーランドの政治の中枢を担ってきました。今後も、同党の動向は、ニュージーランドの政治の未来を占う上で重要な要素となるでしょう。

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