ニワウメ

ニワウメ（庭梅）

ニワウメ（庭梅、学名: Prunus japonica、またはCerasus japonica）は、バラ科スモモ属に分類される落葉低木です。庭木として親しまれ、ウメに似た花を咲かせることからこの名が付けられました。英語ではJapanese bush cherry、またはOriental bush cherryなどと呼ばれ、中国語では郁李と表記されます。

中国の華北、華中、華南地方の山地に自生し、日本には江戸時代に渡来しました。現在では、観賞用として広く栽培されています。Japanese bush cherryという名前は、ミヤマザクラを指す場合もあります。

特徴

ニワウメは落葉広葉樹の低木で、根元からひこばえを出し、株立ち状に成長します。大きさは1.5m四方程度。若木の樹皮は暗紫色をしていますが、次第に灰色を帯びて縦に裂けていきます。一年枝は赤褐色で、毛はありません。

花期は4月頃で、淡紅色の可愛らしい花を咲かせます。花は雌雄同体で、虫媒花です。直径1cmほどの赤い実は、甘い香りがし、食用にもなります。ただし、味は酸味が強く、スミミザクラに似ています。ジャムやパイなどに利用されることもあります。

果実の中には種が一つ入っています。増やし方は、種からが一般的ですが、取り木によっても可能です。

冬芽は鱗芽で互生し、卵形または球形をしており、5〜7枚の芽鱗に包まれています。一箇所に数個の冬芽がつくのが特徴です。花芽は球形、葉芽は小さな卵形をしています。葉痕はほぼ腎形で、維管束痕が3個あります。

生育環境

ニワウメは、森林地帯や日当たりの良い場所で見られます。水はけが良く、湿り気のあるローム質の土壌を好みます。日向、またはやや日陰を好みます。土壌中に石灰がいくらか含まれている方が適していますが、多すぎるのは良くありません。

利用

医療への利用

ニワウメの果実は乾燥させて利尿薬として用いられます。また、科学的に確立されたものではありませんが、種子にはアミグダリンやプルナシンといった、他のサクラ属の植物にも含まれる成分が含まれていると考えられています。これらの化合物は、腸内細菌の酵素によって分解されると、有毒なシアン化水素を生成する可能性があります。

ニワウメの仁（種の中身）は、下剤、利尿剤、血圧降下薬などとして利用され、便秘、浮腫、不眠症などに内服薬として処方されます。根も便秘、子供の発熱、歯のトラブルなどに利用されることがあります。

染色への利用

葉は緑色の染料として、果実は灰色がかった緑色の染料として利用できます。

品種と変種

ニワウメには、いくつかの品種と変種が存在します。

品種

Prunus japonica f. engleri
Prunus japonica f. fauriei
Prunus japonica f. minor
Prunus japonica f. oldhamii
Prunus japonica f. rufinervis
Prunus japonica f. sphaerica
Prunus japonica f. thunbergii

変種

Prunus japonica var. engleri
Prunus japonica var. eujaponica
Prunus japonica var. florepleno
Prunus japonica var. fukienensis
Prunus japonica var. glandulosa
Prunus japonica var. gracillima
Prunus japonica var. keri
Prunus japonica var. multiplex
Prunus japonica var. nakaii : 満洲由来で、5cmほどの大きめの実がなります。
Prunus japonica var. packangensis
Prunus japonica var. pendula
Prunus japonica var. puberceus
Prunus japonica var. puberula
Prunus japonica var. pubescens
Prunus japonica var. sphaerica
Prunus japonica var. thunbergii
Prunus japonica var. typica
Prunus japonica var. zhejiangensis

参考文献

鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽：四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、177頁。ISBN 978-4-416-61438-9。

関連項目

* ユスラウメ

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