ヌミディア人

ヌミディア人：古代北アフリカの歴史を彩ったベルベル人たち

ヌミディア人とは、現在のアルジェリア北東部にあたるヌミディア地方に居住していた、ベルベル系の半遊牧民の部族連合を指します。彼らは、カルタゴや共和政ローマといった古代の大国と深く関わりながら、独自の文化と歴史を築き上げました。

ノマデスからヌミダエへ

ポエニ戦争の時代、歴史家ポリュビオスは、ヌミディア人を「ノマデス」（遊牧民）と呼んでいました。これは、彼らが騎兵として優れていたこと、そして北アフリカの他の住民と区別するためだったと考えられます。その後、マシニッサ王が王国を統一すると、ローマ人は彼らを「ヌミダエ」（ヌミディア人）と呼ぶようになりました。しかし、これはあくまでローマ側の呼称であり、ヌミディアの王たちは自らを「マッシュリー」と称していました。

ヌミディア統一以前：二つの部族連合

紀元前3世紀頃、ヌミディアには、東のマッシュリー族と西のマサエシュリ族という二つの部族連合が存在しました。第二次ポエニ戦争では、マッシュリー族の王ガイアがカルタゴ側につき、マサエシュリー族の王シュファクスがローマ側につきました。ヌミディア騎兵は、ハンニバルがイタリアに侵攻した際にその勇名を馳せ、カンナエの戦いなどでローマ軍を打ち破るなど、大いに活躍しました。

しかし、ガイア王の死後、シュファクス王がマッシュリー族を制圧し、マシニッサはローマに降伏します。その後、シュファクスはローマから離反してカルタゴと同盟を結びますが、大スキピオ率いるローマ軍に敗れ捕虜となります。そして、マシニッサが統一ヌミディア王国の王としてローマによって即位させられました。ザマの戦いでは、マシニッサ王はローマ軍を支援し、カルタゴ軍を破ることに貢献しました。

ヌミディア統一以後：王国とローマ

マシニッサ王は、マサエシュリ族を制圧し、ヌミディア王国を築き上げました。ローマ人はこの王国を「Regnum Numidiae」と呼びました。マシニッサの治世下、ヌミディア王国の版図は最大となり、西はマウレタニア、東はキュレナイカにまで広がりました。マシニッサの死後、孫のユグルタがローマに反旗を翻し、ユグルタ戦争が勃発します。紀元前1世紀には、ヌミディア西部はマウレタニアの支配下に入りますが、東部はヌミディア人の王によって支配され続けました。ヌミディアはローマの同盟国として、ローマの戦争にしばしば支援部隊を派遣し、カエサルの『ガリア戦記』にもその名が登場します。

ローマによる支配：ヌミディアの終焉

紀元前49年、ローマの内乱でカエサルが勝利すると、ヌミディア王ユバ1世は敗死し、ヌミディアはローマの属州となりました。その後、一時的にユバ2世に領土が返還されますが、紀元前25年にはユバ2世がマウレタニア王に配置換えとなり、ヌミディアはマウレタニア領とアフリカ・ノウァ属州に分割され、その歴史に幕を閉じました。ローマの支配下に入ると、ヌミディアはローマ化され、多くのローマ人が移住しました。

ヌミディアの王たち

マサエシュリーの王
シュファクス：ローマに敗れて王国を失う。
マッシュリーの王
ガイア：ガラとも呼ばれる。
マシニッサ：ガイアの子。ローマの下でヌミディアを統一した。
ミキプサ：マシニッサの子。
ユグルタ：マシニッサの孫。ユグルタ戦争を起こした。
ユバ1世：ローマに敗死する。
* ユバ2世：最後のヌミディア王。

ヌミディア人は、その騎兵の勇猛さで歴史に名を残し、ローマとの関わりの中で、独自の文化を育みました。彼らの歴史は、古代北アフリカの多様性と複雑さを物語る上で、欠かすことのできない重要な要素です。

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