ネオプラン・メガライナー

ネオプラン・メガライナー：二階建てバスの夢と終焉

ネオプラン・メガライナー（Neoplan N128/4 Megaliner）は、ドイツのネオプラン社が製造した、2階建ての超大型バスです。1992年のIAA自動車ショーで発表され、その巨大な車体と高い輸送能力で注目を集めました。本記事では、日本国内での導入・運用状況を中心に、その詳細を解説します。

概要

全長14.9m、車体重量19t、総重量24tという、規格外の巨体を誇るメガライナー。その最大の特徴は、定員を大幅に増やした2階建て構造です。総座席数は84席または86席（車両により異なる）で、1階には車椅子対応スペースも設けられています。前輪2軸、後輪2軸の4軸車で、前2軸が操舵輪となっています。また、後輪後軸には、右左折時の負荷を軽減するためのパッシブステア機構が搭載されており、運転席からのスイッチ操作でトー角を制御します。これにより、ステアリング操作時に後輪にかかる横力を逃がすことができます。

日本に導入された車両のトランスミッションは、先行導入されたジェイアールバス関東の1台のみが8速MTで、残りの3台は12速ATです。

この車両は、日本の車両制限令で定められた最大長12mを超過しているため、運行には特殊車両通行許可が必要です。そのため、運行経路や時間帯が厳しく制限され、道路混雑時や通行止め時の迂回が困難になるなど、運行上の制約が多くありました。

主要諸元

型式: N123/4 または N128/4
全長: 14,990mm
全高: 3,790mm
全幅: 2,490mm
車両重量: 19,600kg
乗車定員: 84名 (86名)
車両総重量: 24,220kg (24,330kg)
エンジン: メルセデスベンツ OM422LA V型8気筒
排気量: 14,618cc
最高出力: 390kW (530PS) / 2,100rpm
最大トルク: 1,990N·m (203kgf·m) / 1,200rpm
トランスミッション: 8速MT / 12速AT

運用

メガライナーは、慢性的な利用客の多さに悩まされていた東京駅 - つくばセンター間の高速バス「つくば号」の輸送力増強のため、2000年に見本輸入されました。その後、2002年12月8日より特殊車両として運行が開始されました。当初はジェイアールバス関東の1台が使用されていましたが、後に増備され4台体制となりました。内訳は、ジェイアールバス関東が2台、関東鉄道が2台で、関東鉄道の車両はジェイアールバス関東からのリースでした。

車体の長さから通行できる道路が限られていたため、通常の車両とは異なる走行ルートで運行されました。例えば、下り便では、首都高速道路への進入経路が異なり、下広岡・並木三丁目の両バス停には停車しませんでした。また、予備車がなかったため、整備時には通常のハイデッカー車が使用されました。

回送経路にも制限があり、つくばセンターからジェイアールバス関東土浦支店までの回送が認められなかったため、夜間運用後には関東鉄道つくば中央営業所に回送され、翌朝の上り便まで留置されていました。

夜行路線への転用

2005年11月のダイヤ改正で、つくばエクスプレスの開業により利用客が減少した「つくば号」から関東鉄道の2台が外され、ジェイアールバス関東に返却されました。さらに2006年6月には、ジェイアールバス関東の2台も「つくば号」から撤退し、関東鉄道にリースしていた2台は西日本ジェイアールバスに転配されました。

その後、東京 - 大阪間の夜行高速バス「ドリーム号」の慢性的な混雑を緩和するため、2006年6月14日より、東京駅 - 大阪駅間で「青春メガドリーム号」の運行が開始され、メガライナーが投入されました。「つくば号」時代とは異なり、予備車が確保され、多客時には臨時便も運行されました。

「青春メガドリーム号」でも通行道路の制限があり、迂回ができないため、通行止めが発生した場合には、サービスエリアなどで待機することがありました。また、新御堂筋の千里中央 - 江坂間では、他のドリーム号とは異なり側道を通行していました。

火災事故と除籍

しかし、2008年5月28日に西日本ジェイアールバスの車両が名神高速道路で全焼、さらに2009年3月16日には、ジェイアールバス関東の車両が東名高速道路で全焼するという、2度の火災事故が発生しました。いずれの事故でも乗客と運転手に死傷者は出ませんでしたが、これらの事故を受け、国土交通省は両社に対しメガライナーの除籍とドイツへの返却を指示しました。

これにより、日本国内のメガライナーは全車姿を消すこととなりました。「青春メガドリーム号」は、その後、西日本ジェイアールバスの2階建て車両（三菱ふそう・エアロキング）によって隔日運行され、2009年9月10日に廃止されました。

また、メガライナーの兄弟車であるスカイライナーも、2009年9月に東名高速道路で出火事故を起こしており、ターボチャージャーの故障が原因とされています。

脚注

関連項目

ネオプラン
ネオプラン・シティライナー
ネオプラン・スカイライナー
特殊車両通行許可
保安基準の緩和

外部リンク

JRバス関東株式会社
* 西日本JRバス

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