ネオンくらげ

映画『ネオンくらげ』詳細解説

概要

『ネオンくらげ』は、1973年に公開された日本のR-18指定映画です。山内えみこが主演を務め、内藤誠が監督しました。東映東京撮影所が製作し、東映が配給を担当しました。この作品は、『釜ケ崎極道』や『処女かまきり』との3本立てで公開されました。

山内えみこのデビュー作であり、内藤誠監督が唯一手掛けた成人映画としても知られています。物語は、青森から上京した17歳の少女ゆきが、都会の遊び人に騙され、キャッチガールに転落するも、その中で逞しく生きる姿を描いています。新宿のネオン街を舞台に、少女の葛藤と成長を映し出しています。

ストーリー

青森から上京した17歳のゆきは、喫茶店のウェイトレスとして働いていました。19歳のバーテンダーである研治と同棲生活を送っていたある日、ゆきは喫茶店の客と口論になります。その様子を目撃した都会の遊び人でカメラマン志望の浩一は、ゆきをキャッチガールとしてスカウトしようと画策します。浩一はゆきを3人のチンピラに強姦させ、心身ともに傷ついたゆきを親切そうに助け起こします。浩一の策略により、ゆきはヌードモデルとなり、新宿のぼったくりバーでキャッチガールとして働くことになります。

「今日からあたしネオンの下でくらげみたいにフラフラ生きるんだ」というゆきの言葉通り、彼女は新宿のきらびやかなネオンの海で、くらげのように漂いながら生きていくことになります。

キャスト

ゆき：山内えみこ
里枝：川村真樹
研次：添田聡司
北見浩一：荒木一郎
黒木康：北川康春
弘子：小林千枝
客女：片山由美子
レインボーの客：田中小実昌
レインボーの客：坂本長利
警官：小松方正

スタッフ

監督：内藤誠
企画：矢部恒、寺西国光
脚本：内藤誠
撮影：飯村雅彦
美術：藤田博
照明：大野忠三郎
音楽：三上寛
編集：田中修
助監督：深町秀煕

製作経緯

『ネオンくらげ』は、当初、実録路線の一つとして企画されました。『週刊文春』の記事によると、東映はマスコミで騒がれた事件や人物を映画化する傾向があり、本作もその一つとして企画されたようです。しかし、実際には、内藤監督の独自の解釈や、三上寛の音楽からのインスピレーションが大きく影響しています。

当時の東映社長・岡田茂から、低予算でポルノ度の高い作品を作ることを条件に内藤監督は本作の製作を任されました。タイトルは岡田社長が命名し、内藤監督は、新宿ピット・インで山下洋輔トリオのジャズを聴いたり、三上寛の歌に影響を受け、本作の脚本を執筆しました。ヒロインが青森から上京した設定や、舞台が新宿ゴールデン街である点は、三上寛の楽曲からインスパイアされたものです。

脚本

内藤監督は、ゴールデン街横の富士屋ホテルに缶詰になり、一人で脚本を書き上げました。当初、夜の街で漂うクラブホステスというプロットはあったものの、内藤監督は独自の視点を盛り込み、オリジナルな作品に仕上げました。

キャスティング

主演の山内えみこは、東映の宣伝部にいた今井功によって見出されました。当時スチュワーデスを目指していた山内は、当初ポルノ映画への出演を拒否していましたが、内藤監督やプロデューサーの説得により出演を決意しました。内藤監督は、撮影前に山内を自宅に招き、家族と夕食を共にするなど、彼女の精神的なケアにも気を配りました。荒木一郎と川村真樹は、脚本を読んで出演を快諾しました。

音楽

音楽は三上寛が担当しましたが、渋谷毅が採譜に協力し、録音にはジャズプレイヤーの坂田明、中村誠一、古澤良治郎も参加しました。ギャラは一人1万円だったと言われています。

続編

岡田社長は、完成試写を観ただけで続編の製作を指示しましたが、内藤監督は成人映画の製作に疲れ果てて降板しました。続編の『ネオンくらげ 新宿花電車』は、山口和彦監督が手掛けています。

評価

内藤監督は本作が失敗したら、二度と映画を撮れないだろうという覚悟で製作に臨みました。しかし、公開後、清水哲男、上杉清文、大和屋竺、荒戸源次郎、桂千穂、川本三郎などの映画評論家から高い評価を得ました。

2011年には、本作と続編が東京ラピュタ阿佐ヶ谷で特集上映されました。2024年には、2作抱き合わせでDVD化もされています。ライナーノーツでは、早川優が、シリーズが2作で終わってしまったことを残念がりつつも、本作の魅力を高く評価しています。

脚注

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外部リンク

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