ネグロス島

ネグロス島 (Negros)

ネグロス島はフィリピン中部に位置するビサヤ諸島の一部であり、同国で4番目に大きな島です。面積は12,710平方キロメートルで、その名の通り砂糖生産が非常に盛んなことで知られています。島は西にパナイ島、北西にギマラス島、東にはセブ島があり、南にはシキホル島が点在しています。また、周囲にはタノン海峡、ボホール海、そしてスールー海が広がっています。

地理と文化の二分

ネグロス島は全体が二つの行政区に分かれています。島の東部は中部ビサヤ地方に属する東ネグロス州、一方西部は西ビサヤ地方に属する西ネグロス州です。この分割は、島を貫通する山脈に起因しており、またここに住む二つの異なる民族集団に基づいています。西側ではイロンゴ語を話す人々が主に住んでおり、東側ではセブアノ語が話されています。主要な都市は、バコロド（西ネグロス州の州都）とドゥマゲテ（東ネグロス州の州都）で、それぞれ多くの人口を抱えています。

産業の基盤

ネグロス島の経済は主に農業に依存しており、特にサトウキビの栽培が主な産業です。島のすべての平野は広大なサトウキビ畑に覆われ、肥沃な土地を活かして砂糖が生産されています。具体的には、ネグロス・オクシデンタル州がフィリピンの砂糖生産の半分を担うとされており、ヴィクトリアス市にある製糖工場は世界で最大の規模を誇るといいます。また、島の漁業も重要で、沿岸部では漁業が盛んであり、さらに最近ではダイビングリゾートも観光客に人気を博しています。

砂糖経済とその影響

しかし、砂糖産業に強く依存しているため、ネグロス島は脆弱な経済構造を抱えています。プランテーションの多くは大地主が所有し、その影響でほとんど自給自足が成り立っていません。その結果、砂糖価格が低下すると多くの人々が貧困にあえぐことになります。特に1985年の砂糖価格暴落では、土地を持たない多くの労働者が職を失い、食料を他の島から輸入せざるを得ない状況に陥りました。これは、経済的不安定をもたらし、島内の貧富の格差を助長させました。

歴史的背景

ネグロス島の歴史は、スペインによる植民地支配から始まります。島の名前は、初期の先住民の肌が黒かったことに由来し、ネグリト人が住んでいました。1565年にスペインがこの島に到達し、以後長い間植民地として支配されました。19世紀中頃には砂糖の需要が高まり、大規模な栽培が行われるようになりましたが、それに伴って社会構造も大きく変化し、農民は労働者化していきました。

近代の動乱

1898年にはフィリピン革命が起こり、ネグロス島でも地元住民がスペインに対して立ち上がりました。続く日本による占領やアメリカの支配を経て、砂糖経済の危機と共に内戦が続き、村全体が分断されることとなります。さらに2000年代には国際市場の回復があったものの、貧富の差は解消されず、多くの人々が依然として困難な状況に置かれています。

自然災害と復興

また、2012年には島で震度6.9の地震が発生し、数多くの犠牲者が出ました。このような自然災害に対する防災と復興の取り組みも急務とされています。近年も観光や新しい産業の振興が図られているものの、根本的な社会問題の解決は容易ではありません。ネグロス島は、その美しい自然と豊かな文化を有しつつ、過去の遺産と課題を背負う島でもあります。

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