ハインケルHe162

ハインケル He 162 フォルクスイェーガー

ハインケル He 162 フォルクスイェーガーは、第二次世界大戦末期にドイツ空軍が開発・運用した単発ジェット戦闘機です。「国民戦闘機」を意味する「フォルクスイェーガー」の愛称で知られ、これは一般市民による製造と搭乗を想定した開発計画に由来します。

開発の背景

1944年、連合軍によるドイツ本土への爆撃が激化し、アメリカ軍の護衛戦闘機によってドイツ空軍の迎撃機は苦戦を強いられていました。この状況を打破するため、ドイツ空軍はジェット戦闘機の大量生産を計画しました。

当初、ジェット戦闘機Me 262の生産を優先すべきという意見もありましたが、より迅速な戦力化を目指し、簡易な構造で大量生産が可能な「フォルクスイェーガー」計画が推進されました。この計画では、熟練工でなくても組み立て可能な木製部品を多用し、グライダー訓練しか受けていないパイロットでも操縦できる機体を目指しました。

設計と特徴

ハインケル社が提出した設計案は、小型で流線形の胴体に背負い式のジェットエンジンを搭載した独特の形状でした。機体の軽量化のため、木材や合板が多用されています。また、垂直尾翼はジェットエンジンの排気を避けるため、二枚に分かれています。コックピットには射出座席が装備されており、当時のジェット機としては先進的な設計でした。

開発・試験

開発は急ピッチで進められ、試作機は設計案採用からわずか2ヶ月後に初飛行を成功させました。しかし、初期のテストでは、機体の接着剤が熱で溶け出したり、ピッチ方向の安定性に問題があることが判明しました。それでも開発スケジュールは変更されず、不十分な改修のままテストが続けられました。

改良の結果、機体重量は当初の予定を大きく上回りましたが、それでも当時のジェット機としては高い速度を記録しました。

実戦と評価

1945年、He 162は実戦部隊に配備されましたが、その頃にはドイツの敗戦は濃厚となっており、戦果を上げることはできませんでした。熟練パイロットからは「第一級の戦闘機」と評価された一方で、「安定が悪く、常に操縦桿での微調整が必要」と酷評する者もいました。

また、操縦が複雑で繊細な技術を要したため、事故も多発しました。特に、単発エンジンであるため、エンジン故障時のリスクが大きく、未熟なパイロットには扱いが難しい機体でした。

バリエーション

He 162には、様々なバリエーションが存在します。

He 162 A-0: 先行量産型。
He 162 A-1: 30mm機関砲を搭載した型。
He 162 A-2: 20mm機関砲を搭載した型。
He 162 B-1: エンジンや機体構造を改良した型（計画のみ）。
He 162 E: ロケットエンジンを補助ブースターとして搭載した型。

性能諸元

乗員: 1名
全長: 9.05 m
全幅: 7.2 m
全高: 2.6 m
最大離陸重量: 2,800 kg
エンジン: BMW 003E-1/E-2 ターボジェットエンジン
最高速度: 905 km/h (高度6,000 m)
航続距離: 975 km
上昇限度: 12,000 m
武装: 30mm機関砲×2 または 20mm機関砲×2

登場作品

He 162は、アニメや漫画などにも登場しています。

『悪魔伝の七騎士』: 戦場まんがシリーズの一編。主人公が搭乗。
* 『ストライクウィッチーズ』: OVA作品に、試作型簡易ジェットストライカーユニットとして登場。

まとめ

ハインケルHe162フォルクスイェーガーは、戦況が悪化する中で開発を急がれたため、多くの問題を抱えていました。しかし、ジェット機という先進的な技術を取り入れ、短期間で実戦配備にこぎつけたことは特筆に値します。その一方で、パイロットの育成が追いつかず、事故が多発したという側面も持ち合わせています。もし、もう少し開発に時間がかけられていれば、その後の航空機の歴史を大きく変えていたかもしれません。

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