ハスの実

ハスの実とは

ハスの実とは、ハス属の植物、特にその種子のことを指します。ハスは、仏教とも縁の深い植物で、古くから人々の生活に密接に関わってきました。若い実は食用として、成熟した種子は乾燥させて薬用や数珠の材料として利用されています。

ハスの実の種類

市場に出回っている乾燥ハスの実には、主に2種類あります。

茶色のハスの実: 種子が熟した状態で収穫されたもので、皮が茶色をしています。
白いハスの実: 種子がほぼ完全に発達したものの、果托がまだ緑色の状態で収穫されたものです。脱穀・脱膜処理が施され、苦味のある胚芽は取り除かれています。

茶色のハスの実は、熟した種子が膜に付着しているために茶色くなっています。一方、白いハスの実は、収穫時に胚芽が取り除かれていますが、業者によっては漂白処理が施されている場合もあります。

ハスの実の栄養

乾燥ハスの実は、栄養価が非常に高い食品です。100gあたり約332キロカロリーで、糖質、タンパク質、脂質、水分を含み、ビタミンB群やマンガン、リンなどのミネラルも豊富です。特にチアミンは1日の推奨摂取量の43％を占めています。

ハスの実の用途

ハスの実は、様々な用途で利用されています。

食用: 最も一般的な用途は、餡（蓮蓉）として和菓子や中華菓子に使われることです。乾燥させたものは水で戻してスープや粥に入れたり、他の料理の材料としても使用できます。生のハスの実は、果托から取り出し、殻を剥いて食べます。日本では、甘納豆や汁粉の具材としても用いられます。また、シロップ漬けにして乾燥させた「糖蓮子」は、中国で人気のお菓子です。
その他: ハスの実は、数珠の珠としても利用されます。特に仏教においては、ハスが釈迦の誕生に関わる植物であることから、数珠の材料として重宝されています。

ハスの実の薬用

漢方では、ハスの実を「石蓮子」、乾燥させて殻を剥いたものを「蓮肉」と呼びます。石蓮子は、脾・腎・心に作用し、下痢を止めたり、心を落ち着かせる効果があるとされています。蓮肉を含む漢方薬には、啓脾湯や清心蓮子飲などがあります。

ハスの実の歴史

ハスの原産地はインドとその周辺地域で、アジア各地に広まりました。日本では、北海道から九州まで、各地でハスの化石が発見されており、古代から自生、または栽培されていたと考えられています。近世には、非常食として城の堀や寺院に植えられた例もあります。

食用としてハスの実を採取する時期は、花が咲いてから約3週間後の緑色の状態です。この時期の実は柔らかく、皮も手で剥くことができ、ほんのりとした甘みがあります。ハスの実が詰まった花托は、蜂の巣に似ていることから「ハチス」と呼ばれ、それが「ハス」の語源になったと言われています。緑色の種子は熟すにつれて褐色から黒色へと変わり、硬くなります。

アジア産のハスは古くから食用や薬用として利用されており、日本では713年の『常陸国風土記』や927年の『延喜式』にその記録が残っています。一方、アメリカ産のハスは食用にはされていませんが、アメリカ先住民は野生のハスの実や根を食用にしていた記録があります。

ハスの実は、古くから人々の生活に密着し、食用、薬用、宗教用と幅広く利用されてきた植物です。

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