ハファエル・アスンソン

ブラジル・ペルナンブーコ州レシフェで1982年7月19日に生まれたハファエル・アスンソンは、ブラジル出身の元総合格闘家である。アセンションMMAを拠点として活動した。ブラジルポルトガル語圏での発音からハファエル・アスンサオと表記されることもある。

彼のファイトスタイルの特徴は、ブラジリアン柔術で培った卓越したグラウンド技術を核に、予測不能な動きや効果的なパウンドを駆使して試合を組み立てる点にある。相手をグラウンドに引き込み、柔術テクニックでコントロールする能力は非常に高く評価されていた。また、彼の家族は格闘技一家であり、兄のジュニオール、弟のフレディもプロ総合格闘家として活動している。

格闘技への道

18歳で格闘技の世界に入ったきっかけは、いとこや伝説的なホイス・グレイシーからの影響だった。ブラジリアン柔術ではパンアメリカン選手権を制し、また松濤館流空手の大会でも優勝経験を持つなど、アマチュア時代からその才能の片鱗を見せていた。

プロ総合格闘家としての第一歩は2004年。アメリカ合衆国ジョージア州で行われたISCFの大会でデビューを飾った。デビュー後、破竹の4連勝を飾り、2005年には後にUFCで活躍するホルヘ・マスヴィダルから判定勝利を収めるなど、その実力を早期に証明した。2006年2月、AFCのリングで迎えたジョー・ローゾン戦では、体格で勝る相手に対し終始優位に立ち、2ラウンドにはパウンドで追い詰めた後、巧みな腕絡みで一本勝ちを収める鮮烈なパフォーマンスを見せた。

軽量級の有力団体であったWECには2009年4月から参戦。初陣となったWEC 40ではジャミール・マスーを相手に危なげない試合運びで3-0の判定勝利を飾った。しかし、2010年1月には団体のスター選手であるユライア・フェイバーと対戦し、チョークスリーパーによる一本負けを喫している。

UFCバンタム級での軌跡

2011年、WECがUFCに統合されたのに伴い、世界最高峰の舞台であるUFCへ戦いの場を移した。UFCデビュー戦となったUFC 128ではエリック・コクと対戦したが、キャリアで初めてとなるKO負けを喫し、ほろ苦いスタートとなった。

その後、自身の適正階級としてバンタム級への転向を決断。バンタム級初戦となったUFC 134でジョニー・エドゥアルドに3-0の判定で勝利し、新天地での第一歩を成功させた。バンタム級転向後、着実に勝利を重ね、階級のトップランカーへと成長していく。特に2013年10月に行われたUFC Fight Nightでは、当時ランキング9位だったTJ・ディラショーと対戦。後にUFC王者となる難敵相手に2-1のスプリット判定で勝利を収め、この激闘はファイト・オブ・ザ・ナイトに選出されるなど、その実力を世界に知らしめた。

この勝利でタイトル挑戦権を得るかに思われたが、2014年5月に予定されていた当時の王者ヘナン・バラオンとのUFC世界バンタム級タイトルマッチは、アスンソン自身の肋骨負傷により欠場を余儀なくされ、悲願のタイトル挑戦は幻となった。

怪我からの復帰後も安定した戦績を維持し、ブライアン・キャラウェイらを相手に判定勝利を重ね、再びランキング上位に進出した。しかし、度重なる負傷もあり、1年9ヶ月の長期欠場からの復帰戦となったUFC 200では、再び対戦した元王者TJ・ディラショーに判定で敗れた。その後もアルジャメイン・スターリング（後にUFC王者）にスプリット判定で勝利するなど、トップ戦線でその存在感を示し続けた。また、マシュー・ロペスを右フックでKOするなど、打撃によるフィニッシュも見せ、ロブ・フォントにも判定で勝利し、タイトル戦線に再び近づいた。

だが、2019年からはキャリアで最も厳しい時期を迎える。マルロン・モラエスとの再戦で一本負けを喫したのを皮切りに、コーリー・サンドヘイゲン、コーディ・ガーブラントといった新世代の強豪相手に判定負けやKO負けを喫し、4連敗を経験した。この苦しい時期を経て、2022年10月にはDEEPバンタム級王者のビクター・ヘンリーに判定勝利し、約4年半ぶりの白星を挙げ、連敗を脱出した。

キャリアの終焉

しかし、2023年3月に行われたデイビー・グラント戦が、彼の現役最後の試合となった。試合を優位に進めながらも、最終ラウンド終了間際にまさかの逆転となる横三角絞めによる一本負けを喫した。この試合後、アスンソンはケージの上でグローブをマットに置き、長年のキャリアに終止符を打つ現役引退を表明した。

戦績と功績

ハファエル・アスンソンは、ブラジリアン柔術の黒帯保持者であり、そのグラウンドスキルは多くの試合で勝利の鍵となった。UFCではファイト・オブ・ザ・ナイトとパフォーマンス・オブ・ザ・ナイトをそれぞれ1度受賞するなど、観客を魅了する激闘も演じた。常にバンタム級のトップランカーとして多くの強豪と拳を交え、その堅実な戦いぶりと卓越した技術で、総合格闘技界に確かな足跡を残したファイターだった。

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