ハーシェル・ウォーカー

ハーシェル・ウォーカー：異色の経歴を持つ伝説のアスリート

ハーシェル・ジュニア・ウォーカー（Herschel Junior Walker、1962年3月3日 - ）は、アメリカ合衆国ジョージア州オーガスタ出身の元プロアメリカンフットボール選手、総合格闘家。USFL・NFLで活躍したランニングバック（RB）であり、リターナーとしてもその才能を発揮した。その驚異的な身体能力はフットボール界にとどまらず、1992年アルベールビルオリンピックのボブスレー競技や総合格闘技大会にも出場するなど、異色の経歴を持つ。

スポーツとの出会いと才能の開花

ジョージア州のライツビルで幼少期を過ごしたウォーカーは、当初スポーツに興味を示さず、読書や詩作を好む少年だった。しかし、12歳の時に突如スポーツに目覚め、過酷なトレーニングを開始。高校入学後には、アメリカンフットボール、バスケットボール、陸上競技に打ち込み、1979年には3,167ヤードを獲得、チームを初の州チャンピオンへと導いた。卒業時には卒業生総代に選ばれるなど、学業も優秀であった。

ジョージア大学に進学したウォーカーは、その才能をさらに開花させる。1980年にはNCAAの1年生ラッシング記録を更新し、ハイズマン賞の投票では1年生ながら3位に入賞。在学中にNCAA記録を10個、サウスイースタン・カンファレンス記録を15個、ジョージア州記録を30個更新し、1982年にはハイズマン賞を受賞した。

USFLでの活躍

1983年、ウォーカーは当時新興リーグだったUSFLのニュージャージー・ジェネラルズと3年総額520万ドルで契約。この契約は、リーグのサラリーキャップを回避するために、チームオーナーとの個人契約という異例の方法で行われた。しかし、大学フットボール界のスター選手であるウォーカーの加入は、リーグの盛り上げに不可欠であり、他チームからの異論はなかった。1983年と1985年にはラン獲得ヤード1位を獲得し、特に1985年はプロフットボール記録となる2,411ヤードを走破。これは平均5.5ヤードという驚異的な数字である。USFLでの3年間で、彼は通算5,562ヤードを走った。

NFLでの挑戦

USFL解散後、ウォーカーは1985年のNFLドラフトでダラス・カウボーイズに指名され、NFL入りを果たす。1987-1988シーズン、1988-1989シーズンには2年連続でプロボウル、オールプロに選出されるなど、その実力をNFLでも証明した。1988年にはバレエを練習に取り入れるというユニークな練習法も話題となった。1989年、カウボーイズはウォーカーをミネソタ・バイキングスにトレードし、複数の選手とドラフト指名権を獲得。カウボーイズはこの指名権でエミット・スミスなど多くの有望な選手を獲得し、黄金期を迎えることとなった。

バイキングス移籍後はリターナーとしても出場し、1989-1990シーズンにはキックオフリターン・タッチダウンも記録。その後、フィラデルフィア・イーグルス、ニューヨーク・ジャイアンツを経て、1996年に古巣カウボーイズに復帰し、翌シーズンに引退した。

12年のNFLキャリアで、ラッシング獲得ヤード8,225ヤード、パスレシーブ獲得ヤード4,859ヤード、キックオフリターン5,084ヤードを記録し、合計18,168ヤードはNFL歴代8位の記録である。タッチダウンはラッシング61回、レシーブ21回、リターン2回で合計84回を記録。ウォーカーはオフェンスで10,000ヤード獲得し、リターンで5,000ヤードを獲得した唯一の選手である。

その他のスポーツへの挑戦

陸上競技でも100mを10秒22で走り、オリンピックの4×100mリレーの代表候補にもなったウォーカーは、1992年のアルベールビルオリンピックにボブスレーアメリカ代表として出場し、7位入賞を果たした。また、テコンドーの黒帯所持者（5段）でもある。

総合格闘技への挑戦

2009年、ウォーカーは47歳にして総合格闘技に挑戦。Strikeforceとの契約後、アメリカン・キックボクシング・アカデミーでトレーニングを積み、2010年1月30日に行われた「Strikeforce: Miami」でプロデビューを果たし、TKO勝利を収めた。2011年1月29日には、Strikeforce: Diaz vs. Cyborgで2戦目を行い、再びTKO勝利を飾った。

引退後

1999年、ウォーカーはスポーツ・イラストレイテッド誌が選出したNCAAフットボール・オールセンチュリー・チームに選出され、カレッジフットボールの殿堂入りも果たした。現在は、調理済みの鶏肉料理と前菜をレストランなどに卸す会社を経営し、利益を慈善団体に寄付する一方、学校などでの講演活動も行っている。また、自身が多重人格障害に悩まされていたことを告白している。

政界進出

長年の友人であるドナルド・トランプ前大統領の支持を受け、2022年の中間選挙でアメリカ合衆国上院のジョージア州選挙区に共和党から立候補したが、決選投票で民主党現職のラファエル・ワーノック議員に敗れた。

受賞歴・記録

プロボウル選出：2回（1987年、1988年）
オールプロ選出：2回（1987年、1988年）
* 総獲得ヤード1位：2回（1987年、1990年）

ハーシェル・ウォーカーは、その類まれなる才能と努力で、フットボール界だけでなく、様々な分野で輝かしい足跡を残した。彼の挑戦は、多くの人々に勇気と希望を与え続けている。

もう一度検索