バッカスとアリアーヌ

バッカスとアリアーヌ

アルベール・ルーセルが作曲したバレエ音楽『バッカスとアリアーヌ』（Bacchus et Ariane）は、オペラ座の支配人ジャック・ルーシェの依頼により、1930年6月から10月にかけて作曲されました。この作品は、バレエ音楽としてだけでなく、2つのオーケストラ組曲としても知られています。また、『バキュスとアリアーヌ』と表記されることもあります。

概要

作家のアベル・エルマンがギリシャ神話の『テセウス英雄伝』を基に、ミノタウロス退治後のバッカスとアリアーヌの物語をバレエの台本として書き上げました。ルーセルはこの台本に触発され、音楽を創作しました。この作品は、「ナクソス島のアリアーヌの神話に着想を得た多くの音楽作品の中でも、リヒャルト・シュトラウスのオペラと並んで最も有名」と評されることがあります。音楽は、長く曲がりくねったメロディ、荒々しくも洗練された和声、そして強烈なリズムが特徴です。これらの要素は、ルーセルの成熟期の作曲スタイルを象徴しています。

ルーセルの音楽創造の根底には、生命力に満ちたリズムがあり、このリズムからメロディが生まれ、さらにそのメロディの対位法的な絡み合いからハーモニーが生まれるという考え方が、この作品にも反映されています。

初演とその後

1931年5月22日、オペラ座（ガルニエ宮）にて、フィリップ・ゴーベールの指揮、セルジュ・リファールの振付けにより初演されました。バッカスの役はリファール自身が踊り、舞台美術はジョルジョ・デ・キリコが担当しました。しかし、『ラルース世界音楽事典』によると、バレエ公演自体は長くは続かなかったものの、音楽は聴衆を熱狂させ、2つのオーケストラ組曲として演奏会でその名誉を回復しました。特に第2組曲は世界的に有名となり、フランス音楽の中でも最も頻繁に演奏される曲の一つとなりました。一方で、第1組曲は「静かに終わる」という理由からか、不当にも無視されがちだと解説されています。

楽器編成

木管楽器: ピッコロ1、フルート2、オーボエ2、イングリッシュホルン、クラリネット2、バスクラリネット、ファゴット2、コントラファゴット
金管楽器: ホルン4、トランペット4、トロンボーン3、テューバ1
打楽器: 大太鼓、シンバル、ティンパニ、タムタム、チェレスタ
その他: 弦楽五部、ハープ2

演奏時間

第1組曲: 約16分
第2組曲: 約18分
全体: 約35分

構成

第1幕（第1組曲）

1. 前奏曲
2. 迷宮の踊り

第2幕（第2組曲）

1. バッカスはアリアーヌと夢の踊りを再び踊る
2. バッカスの踊り
3. アリアーヌの踊り
4. アリアーヌとバッカスの踊り
5. バッカナール‐アリアーヌの戴冠

主な録音

数多くの録音が存在しますが、特にジャン・マルティノン指揮によるものが有名です。

参考文献

「最新名曲解説全集6 管弦楽曲III」（音楽之友社）
『ラルース世界音楽事典』（福武書店刊）
ジャン・マルティノンによる『バッカスとアリアーヌ』のCDのアリー・アルプライシュによる解説書。（ASIN: B005IAQHP4）

外部リンク

* バッカスとアリアーヌの楽譜 - 国際楽譜ライブラリープロジェクト)

もう一度検索