バビロニア戦争

バビロニア戦争の概要

バビロニア戦争（紀元前311年 - 紀元前309年）は、ディアドコイ戦争の一部として、アンティゴノス1世とセレウコス1世の間で繰り広げられた戦争です。この期間、アレクサンドロス大王の死後、彼の帝国が分裂し、彼の遺将たちが権力争いを展開しました。

背景

アレクサンドロス大王が紀元前323年に亡くなった後、彼の広大な帝国はその後のディアドコイたちの争いによって分裂しました。アンティゴノスは、小アジアからシリアにかけての広範な領域を支配し、大なる勢力を築きました。これを脅威とみなした他のディアドコイたち、特にプトレマイオスやカッサンドロス、リュシマコスは警戒を強めました。一方、アンティゴノスの治下にあったセレウコスは、領土を奪われ、プトレマイオスのもとに逃れました。

紀元前312年、セレウコスとプトレマイオスは共同でアンティゴノスに襲いかかります。彼らは、アンティゴノスの息子デメトリオスをガザの戦いで打ち破り、その勢力を揺るがしました。アンティゴノスは子の窮地を救うため、自らシリアへと急行しました。

戦闘の経緯

セレウコスは、少数の兵士を引き連れてバビロンへ向かい、現地のマケドニア人を味方に付けて成功裏にバビロニアを奪還しました。アンティゴノスは、高い戦力を誇るニカノルとエウアグロスに精鋭軍を指揮させ、セレウコスを攻撃します。しかし、数に劣るセレウコスはティグリス川で待ち伏せ攻撃を行い、敵軍を大きく打ち崩しました。この勝利により、セレウコスは自らの領国の復活を遂げるのです。

その後、アンティゴノスはデメトリオスをバビロニアに派遣し、再攻撃を試みます。しかし、セレウコスの防衛により、デメトリオスはこの目標を果たせませんでした。セレウコスは、アンティゴノスの攻撃から自らの領土を守り抜き、さらなる勝利を収めました。

戦争の結果

この戦争の終焉により、アンティゴノスはセレウコスからバビロニアやメソポタミアの領地を奪い返すことができず、彼のアレクサンドロス帝国再統一の野望は大きく後退することになりました。その間にプトレマイオスが東地中海での勢力を強め、アンティゴノスは自身の後方の脅威を回避するために攻撃対象をプトレマイオスに変更せざるを得なくなりました。

さらに、セレウコスはこの勝利を機に東方へ勢力を拡大しようと試みますが、インダス川流域でマウリヤ朝のチャンドラグプタの大軍と遭遇し、重要な地位を失う結果となります。最終的に、バビロニア戦争での敗北が、紀元前301年のイプソスの戦いにおけるアンティゴノスの惨敗へと繋がり、アレクサンドロス帝国の分裂が決定的になったのです。

参考文献

• - アッピアノス『ローマ史』の「シリア戦争」
• - ストラボン『ギリシア・ローマ世界地誌』
• - ディオドロスの『歴史叢書』
• - ポリュアイノス『戦術書』

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