バプーオン

バプーオン：アンコール遺跡群の壮大な山岳型寺院

バプーオンは、カンボジアのアンコール遺跡にある寺院の一つで、アンコール・トムのバイヨンの北西に位置しています。11世紀中頃の1060年頃、ウダヤーディチャヴァルマン2世によって、ヒンドゥー教の神シヴァに捧げる国家的寺院として建設されました。この寺院は、3層からなるピラミッド型の山岳寺院であり、バプーオン様式の原型とされています。

寺院の構成

バプーオンは、王宮の南側に隣接し、東西425メートル、南北125メートルにおよぶ砂岩の周壁に囲まれています。王宮前広場の南端にある東塔門から、長さ200メートル、橋脚の高さ約1メートルの参道が内側の塔門に向かって延びています。参道の途中には十字形のテラスがあり、3列に並ぶ円柱の橋脚が設けられています。この参道は、かつては崩壊していましたが、フランス極東学院(EFEO)によって修復されました。

この寺院は、須弥山（メール山）を象徴する山岳型寺院であり、基盤は東西120メートル、南北100メートルに及びます。3層の基壇の上は回廊で囲まれ、中央には1基の祠堂があります。寺院の高さは現在34メートルですが、かつては50メートルに達する塔があったとされています。

13世紀末に元の皇帝の使節として訪れた周達觀は、『真臘風土記』の中で、バプーオンを「銅塔一座」と記述し、金塔（バイヨン）よりも高いと記録しています。この記述から、かつては銅葺きであったとも考えられています。

15世紀後期には、バプーオンは仏教寺院に改められ、西側の第2層に長さ70メートル、高さ9メートルの涅槃仏像が建造されました。この涅槃仏像の建設のため、以前あった高さ8メートル以上の塔が取り壊されたと考えられています。バプーオンは砂地に建てられているため、その巨大な規模と相まって、歴史を通じて不安定な状態が続いてきました。涅槃仏像が付け加えられた頃には、既に大部分が崩壊していたと考えられています。

修復の歴史

20世紀には、寺院の大部分が崩壊しており、1920年代の修復の試みは問題を抱えていました。1960年にフランスの考古学者ベルナール＝フィリップ・グロリエのもとで始まった修復作業は、クメール・ルージュの台頭により1972年に中断され、石材の位置に関する記録も失われてしまいました。1994年2月、フランス極東学院(EFEO)の考古学者チームによって修復が再開されました。

修復中は訪問者の入場が制限されていましたが、2010年11月には中央の建造物を除く部分的な入場が許可されました。2011年4月、51年の歳月を経て、考古学者たちは寺院の修復を完了させました。カンボジアの国王ノロドム・シハモニと当時のフランス首相であったフランソワ・フィヨンは、2011年7月3日の公開式典で復元された寺院を初めて見学しました。一般公開も開始されましたが、観光客の転落事故を受けて一時閉鎖され、安全対策の検証後、同年11月14日に一般訪問者の入場が再開されました。

バプーオンは、その壮大な建築と歴史的な背景から、アンコール遺跡群の中でも特に重要な寺院の一つです。その修復の過程は困難を極めましたが、その結果、今日では再びその美しさを目にすることができるようになりました。

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